NEWS | ファッション
9時間前
© ISSEY MIYAKE INC.
Runway/Details: Giovanni Giannoni
Atmosphere:Ivan Marianelli/Ryunosuke Kanaya
Exhibition:Delfino Sisto Legnani, Melania Dalle Grave (DSL Studio)/Ryunosuke Kanaya
ファッションブランド HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKEは2025年6月、イタリア・フィレンツェで開催されたメンズファッション見本市、第108回「ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Immagine Uomo)」にゲスト・オブ・オナーとして参加し、メディチ家ゆかりの「Villa Medicea della Petraia(ペトライアの別荘)」にて、2026年春夏コレクション「Amid Impasto of Horizons-積み重なる地平-」を発表した。
同ブランドは2025年よりパリ・ファッションウィークでの発表をやめ、代わりに世界各地を巡りながら、訪れたことのない場所でものづくりの成果を発表する活動「OPEN STUDIO(オープン ステュディオ)」を展開。創作の場を世界に広げて各地の人々と交流しつつ、より多元的なものづくりに取り組み、発表を通じてより多様な体験を提供することを目指している。その第一弾が今回のイタリアでの制作となった。
© ISSEY MIYAKE INC. Photo by Ivan Marianelli
© ISSEY MIYAKE INC. Photo by Ivan Marianelli
© ISSEY MIYAKE INC. Photo by Ryunosuke Kanaya
本コレクションは、「一本の筆を以て旅をするところから」ものづくりをスタート。豊かな自然の風景と日々の暮らしが息づくイタリアの町を巡りながら、それらを彩る「色」を採集。人々に自然になじみ、なおかつひとりひとりにとって特別なものとなる「日常着」へと発展させていった。
コレクション発表の舞台となったのは、何世紀にもわたってメディチ家から継承されている庭園と歴史的なトスカーナ建築。セットはアンドレア・ファラグナ(Andrea Faraguna)とミヒャエル・クライネ(Michael Kleine)が担当した。巧みに配置された数々のスプリンクラーが織りなす光景は、タイムレスな庭園風景と穏やかに調和している。
「PAINTER’S GEAR」
色の採集に必要な道具を収納するというアイデアから生まれたシリーズ。シャツやジャケットに合わせて、機能性のある着こなしが可能。形と大きさの異なるポケットは、日常生活の小物を携行するのにも使いやすい。
© ISSEY MIYAKE INC.
「LINEN LIKE」
リネンのような風合いと、肌離れの良いさらっとした素材感が特徴のテーラードシリーズ。涼しげで光沢のある素
材は春夏シーズンらしい印象を与える。従来のジャージー素材よりもハリがあり、立体的なシルエットが際立つ。
© ISSEY MIYAKE INC.
「TAILORED PLEATS」
定番として提案しているふたつボタンのジャケットに加え、新型のノーカラーロングジャケット、ロングダブルブレストジャケットなど、幅広いセットアップが揃うテーラードプリーツシリーズ。より一層、構築的な要素を取り入れた。
© ISSEY MIYAKE INC.
「PALETTE」
色の採集に使用したカラーパレットそのものをモチーフとしたプリントシリーズ。調色する過程の痕跡を感じ取れるような模様は、色鮮やかで手作業の感触があり、ものづくりのプロセスを体現している。
© ISSEY MIYAKE INC.
「PAINT BRUSH CLOSE-UP」
色の採集に使用した筆に、絵の具が段々と積み重なってできる模様を写したプリントシリーズ。調色の際に生まれる、筆
の毛先から根元にかけての自然なグラデーションを表現しており、立体的な色の重なりや奥行きを感じさせる。
© ISSEY MIYAKE INC.
「CARRIER CARRIED」
衣服を入れて持ち運ぶガーメントバッグを着用する発想から生まれたシリーズ。着用しない時には折り畳んで、ガーメントバッグの形にもなるパッカブル仕様。遊び心と実用性を兼ねたアイテムである。
© ISSEY MIYAKE INC.
また、制作の裏側やブランドのものづくりを紹介する「エキシビション」においては、ディレクションと空間デザインを日本デザインセンター 三澤デザイン研究室が担当し、同ブランドのデザインチームと協働。コレクションにおけるフィールドワークと研究開発の過程や、ブランドの魅力であるプリーツという技法に秘められた可能性を提示した。
© ISSEY MIYAKE INC. Photo by Delfino Sisto Legnani
© ISSEY MIYAKE INC. Photo by Delfino Sisto Legnani
© ISSEY MIYAKE INC. Photo by Delfino Sisto Legnani
会場では、空間全体に広がる円環状のディスプレイに、フィールドワークのスタディで使用したアイテムを展示。色彩・素材・衣服の制作プロセスを可視化した。その周りには彫刻のようなオブジェが配置され、プリーツ素材の形態特性を備えた実験的な習作が並んだ。
コレクションタイトル「積み重なる地平」は、完成に至るまでに積み重ねられた研究開発のプロセスを示している。そこには、創作の過程で生じる予測不可能な要素を活かしていく、同ブランドのものづくりの姿勢が表現されている。
© ISSEY MIYAKE INC. Photo by Ryunosuke Kanaya
展覧会のディレクターを務めた三澤は、「普段マテリアルとして布地を扱うことが少ない私たちにとって、プリーツ生地はかたちを自在に変容する魔法のようなマテリアルで、その自由性に夢中になりました。覆う、被せる、巻く、折る、重ねるなどの素材に無理のない自然な手法から生地のなりたいかたちを探求した展覧会です」とコメントしている。