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2025.08.04 14:56
この連載では、デザイン史の研究をしている著者が独自の視点で選んだ過去のデザイン作品(ピース)を起点に、さまざまなエピソードを綴っていく。デザイン史をジグソーパズルに例えるならば、ここで紹介する事柄は、どこにはまるかはまだわからない1ピース。それらを組み合わせていけば、まだ見ぬデザイン史のイメージを浮き上がらせることができるはずだ。
2000年代の終わり、大学を卒業して社会人となった私は、日々忙しく働いていた。夜遅くまで仕事をすることもあり、その横ではいつも加湿器が稼働していた。箱型で、こげ茶色を基調にした落ち着いた色合い。インターフェースは限られた情報だけで、格好が良かったのを覚えている。日本の家電ブランド「amadana」から発表された製品だ。
今思えば、あの頃はインテリアを意識した家電がひときわ存在感を放っていた。真っ先に思い浮かぶのは、無印良品の製品だ。1995年に販売が開始された冷蔵庫や電子レンジといった生活家電は、シンプルな機能と白で統一された外観がスタイリッシュだった。2000年に発表された深澤直人デザインの壁掛式CDプレーヤーは、特に記憶に残っている。家電・雑貨のブランド「±0(プラスマイナスゼロ)」や「BALMUDA」が誕生したのは03年。その前の年には、KDDIがデザイナーと協働して携帯機種を開発する「au Design project」が始まった。