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2025.08.26 16:15
この連載は、現在よりも時の流れがずっとゆっくりしていた遥かな昔、古代と呼ばれる時代を振り返る時間旅行の試み。なるべくゆったりとした気持ちで、モノの形やその背後にある感覚・思考に想像を巡らせてみたい。
「見えない森の美女」 2022 チョノン・ベンショ
綿布 刺繍 W-ガレリア蔵
私が初めてアマゾン河流域を訪れたのは1982年のことである。マナウスから河口の町ベレンへ向け、川沿いにある小さな村に寄りながら下ってゆくという、のんびりした旅だったが、その途中で熱帯雨林の中へ小舟で入ってゆく体験は想像を超えたものだった。日本の自然しか知らない若者にとって、アマゾンの森は原始世界というか、別の宇宙に思えた。五感をひっくり返されるような気持ちがしたが、このときのブラジルの旅がきっかけとなって、芸術や人類学に興味を持つようになった。その10年後に今度はエクアドルからペルー国境に広がるアマゾン上流地域を訪れた。このときは写真家として赤道地帯を撮影するプロジェクトの一環だったが、再訪したアマゾンは別の姿をもって現れた。原始ではなく、私の知らない文明のかたちとして、見えてきたのである。