Frank Lloyd Wright, Chair and Table, for the Tree Room, Taliesin Fellowship Complex, Spring Green,
Wisconsin, designed 1932; fabricated 2025 by Current Projects, Cypress plywood. Museum of Wisconsin
Art, West Bend; Courtesy of the Frank Lloyd Wright Foundation, Scottsdale, AZ.

建築家として名高いフランク・ロイド・ライトの家具設計に焦点を当てた展覧会「Frank Lloyd Wright：Modern Chair Design」が、彼の出身であるアメリカ ウィスコンシン州の Museum of Wisconsin Art（MOWA）で、2025年10月4日から2026年1月25日まで開催中。建築作品の陰に隠れがちなライトの家具作品を再評価し、その創造の軌跡を探る意欲的な企画だ。

Frank Lloyd Wright, Hillside Dining Room Chair, for the Taliesin Fellowship Complex, Spring Green,
Wisconsin, designed c. 1939–40, oak, paint, upholstered fabric. Frank Lloyd Wright Foundation
Collections, 3301.2061; Courtesy of the Frank Lloyd Wright Foundation, Scottsdale, AZ.

本展は、ライトが約70年にわたるキャリアの中で設計した200以上の椅子から、住宅用に設計され40脚を展示。未発表デザインの復元作品やスケッチ、アーカイブ写真を交えながら、プレーリー・スクール時代から晩年のタリアセン期に至るデザインの流れを、1911年から1959年の5つの時代を通してたどる構成になっている。

Frank Lloyd Wright, Armchair, for Taliesin, Spring Green, Wisconsin, designed c. 1914, fabricated
2025 by Stafford Norris, III, Cypress, upholstered fabric, gold leaf. Museum of Wisconsin Art, West
Bend; Courtesy of the Frank Lloyd Wright Foundation, Scottsdale, AZ.

復元作品は、フランク・ロイド・ライト財団とタリアセン研究所とのパートナーシップにより制作され、MOWAパーマネントコレクションに加わった。歴史的な30点のオリジナル作品と並べて展示することで、ライトの家具設計の軌跡が立体的に浮かび上がる展示空間が生み出されている。

注目すべきは、ライトが図面のみを残した未発表の椅子を、ライトのオリジナル図面や写真に基づいて現代的に再構築した作品群である。たとえば、リッチランド・センターのADジャーマン倉庫やニューヨークのグッゲンハイム美術館のために設計された椅子などが、初めて実体として姿を現す。

Frank Lloyd Wright, Café Chairs (two), for the Solomon R. Guggenheim Museum, New York, designed
c. 1957; fabricated 2025 by Butler Metal Spinning Corp., spun aluminum, upholstered fabric. Museum of
Wisconsin Art, West Bend; Courtesy of the Frank Lloyd Wright Foundation, Scottsdale, AZ.

復元という行為を、単なる模倣ではなく、ライトの思考と素材探求のプロセスを再解釈する試みとして位置づけた本展。建築と家具の境界を超えて、ライトの創造の核心に迫る内容は、現代のデザイン思考にも新たな洞察をもたらすだろう。