X+Livingが天津に書店「鐘書閣」を設計
レンガとスチールで境界を曖昧にする空間

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建築設計スタジオX+Livingは、中国・天津のイタリア風地区にある建物を「天津鐘書閣(Tianjin Zhongshuge)」として改修した。レンガとスチールを用いた書棚群により、建築空間そのものを「彫刻的書架」として再解釈している。

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建物は天津の再開発エリアに位置し、赤レンガのイタリア風建築様式を踏襲している。周囲の街並みに調和させるため、古典的なプロポーションのファサードに装飾柱やアーチ、軒の意匠を加えた。設計の特徴は、ベネチアンブラインドのように隙間を設けたレンガ積みで、光と影の層を生み出している。

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X+Livingの創設者リー・シアンは「このデザインは、建築の輪郭をあえて曖昧にしています。知識や認識の境界は曖昧ですが、探求する心の核はゆるぎないものです。書店はオープンな公共空間であるべきです」と語る。

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店内は外観の層状デザインを引き継ぎ、積層されたスチールプレートが中央ホールを包み込む。これらは空間を流れるように取り囲みながら、部分的に階段やベンチとして立ち上がり、来訪者の動線と滞留の場を生み出す。光を透過するスチールスラットの隙間は、空間全体に陰影を落としている。

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内装の素材には、深みのあるブルーグレーのスチールと、対照的なアースカラーのレンガを採用。どちらも素材の質感を生かして仕上げられている。レンガは約40万個が特注でつくられ、複雑な曲線や階層構成を形づくるために、さまざまな形状やサイズのものが選び抜かれた。

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X+Livingは「レンガという素材を再定義する試みでもあります」と述べている。素材の形態的可能性を探ることで、クラフトマンシップと地域文化を融合させたデザインを目指したという。本書店は2025年Dezeen Awardsリテール部門にノミネートされている。End

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