日本発で世界初のオープンイヤー型集音器
NTTソノリティ「cocoe Ear(ココエ イヤー)」

近年、加齢や生活環境の変化により、聞こえに不安や不便を感じる人が増加している。日本での推計によれば、聴覚に何らかの支障を抱える人は1,400万人を超えるともいわれるが、一方で、それを補う補聴器や集音器の利用率は決して高くない。理由としては、「装着していることが目立つ」「耳をふさぐことによる違和感がある」「日常使いには大げさに感じる」といった心理的・身体的ハードルが指摘されてきた。

その結果、聞こえの衰えを自覚しながらも対処を先送りし、会話を避けたり、外出や人との交流を控えたりすることで、社会的孤立や生活の質の低下につながるケースも少なくない。聞こえの問題は、個人の身体的課題にとどまらず、人同士のコミュニケーションや、コミュニティへの参加にも影響を及ぼす社会的課題となっている。

NTTソノリティが立ち上げた新ブランド「cocoe(ココエ)」は、「声」を「ここへ(=ここに届く)」というニュアンスを重ねたネーミングからもわかるように、この問題をテクノロジーの力で解決しようとする取り組みだ。世界初のオープンイヤー型集音器「cocoe Ear(ココエイヤー)」は、同ブランドの第一弾製品であり、従来の補聴器や集音機とは異なる発想で、聞こえを補うことを日常の延長線上に置き直そうとする点に、際立った独自性がある。

最大の特徴は、耳をふさがずに高い要求を満たす設計を採用していること。一般的な補聴器やカナル型の集音機は耳穴を密閉する構造が多く、閉塞感や自声がこもる感覚が生じやすかった。しかし、cocoe Earは耳を開放したまま装着することで、周囲の環境音を自然に取り込みつつ、必要な音だけを補うというアプローチをとっている。これにより、会話の声を強調しながらも、周囲の気配や生活音を遮断しない、現実感のある聞こえを実現している。

このオープン構造を成立させているのが、NTTグループが長年培ってきた音響技術である。cocoe Earには、音を狙った領域に届ける音響制御技術が用いられており、耳をふさがない構造ながら、音漏れやハウリングを抑え、遅延の少ない自然な音を実現している。単に音を大きくするのではなく、環境音と増幅音を調和させる設計思想が貫かれている点も特徴的だ。

装着感においても、日常使いが強く意識されている。片耳約10gという軽量さにより、長時間装着しても負担が少なく、眼鏡とも併用しやすい。補聴器特有の「身につけている感覚」を極力排し、イヤホンに近い感覚で装着できる点は、これまで補聴器に抵抗感を持っていた層にとって大きな意味を持つ。

さらに、集音器としてだけでなく、ワイヤレスイヤホンとしても使用できる。ボタン操作によって集音機能のオン・オフを切り替えることができ、音楽再生やオンライン会議、スマートフォンの通話などにも対応する。初期設定を必要とせず、直感的に操作できる点も重視されており、デジタル機器に不慣れな利用者でも扱いやすい構成だ。左右のユニットが分かれたワイヤレスイヤホンは失くす不安があるという声に応えて、専用の脱着式ネックストラップが付属するのも、日本製品らしい心遣いと言える。

加えて、テレビ用トランスミッターのcocoe Linkと組み合わせることで、テレビ音声をワイヤレスで直接受信するといった使い方も可能である。cocoe Linkは、テレビのイヤフォン端子と有線でつないでも、また、それ自体が持つ集音マイクを使ってテレビの近くに置くだけでも機能させることができる。聞こえに衰えのない家族と同じテレビのボリューム設定でも、自分に適した音量で楽しめる点は、家庭内でのストレス軽減にもつながるはずだ。

cocoe Earは、補聴器とイヤホンの中間に位置する製品ではなく、「聞こえ」を日常生活の中で自然に支える新しい道具として企画された。聞こえの衰えを特別なものとして切り分けるのではなく、生活の一部として無理なく補う。その思想こそが最大の独自性であり、これからの“聞こえのインフラ”のあり方を示すひとつの提案である。End