NEWS | 建築
2025.05.27 11:42
Photos by Virgile Simon Bertrand
中国・深圳市光明区では、深圳科学技術博物館(The Shenzhen Science & Technology Museum)が2025年5月にオープンした。単なるテーマパークにとどまらず、地元のテック産業や⼤学、教育機関、研究センターなどとも連携し、テクノロジー開発の最前線に立つ深圳の取り組みを世界に向けて発信する場所となる。
巨大な楕円体の建築を手がけたのは、ザハ・ハディド・アーキテクツ。新たに開発されたサイエンスパークの南東角に位置し、立地する地形に呼応するように設計された建物は、内部のギャラリーが張り出したような屋外テラスが印象的である。
館内は、展⽰ホールやギャラリー、没⼊型劇場や映画館といった施設を展開。リサーチラボをはじめとする、教育施設、イノベーションセンターを完備している。
中央のアトリウムには、サイエンスパーク側に大きく開かれたガラスウォールがあり、⾃然光や周囲の景観を館内に取り込みつつ、人々を呼び込む窓口にもなる。各ギャラリーは、アトリウムの壁に沿って配置されるだけでなく、吹き抜け空間に浮かぶように構成され、来場者を直感的に導く視覚的な⼿がかりにもなっている。
環境負荷にも配慮し、建物全体には最先端のコンピューターシミュレーションを活⽤したパッシブデザインを採用。建物の形状や空間構成、外壁の設計には、年間⽇射量、気温、湿度、卓越⾵、大気質など、深圳の亜熱帯気候と⽴地条件が反映され、最適な性能を発揮する。また、各階に設けられたテラスは、直射⽇光を遮るとともに、眼下を見渡す休憩や瞑想の場としても活用される。
特殊なコーティングが施されたファサードには、スチール表⾯にできたナノスケールの酸化膜により、セルフ保護・セルフ洗浄機能を備えたマイクロ層が形成される。これにより、ステンレス鋼の耐候性や耐⾷性が向上し、塗装をしなくても繊細な質感や⾊彩も現れる。宇宙の天体のように深いブルーからグレーのグラデーションまで多彩に変化し、建物全体に豊かな奥行きと表情をもたらしている。