釜山の傾斜地に描く、生活と都市の再構築
OMA「Busan Slope Housing」

Busan Slope Housing (Anchang)

韓国釜山の丘陵地帯において、現代の都市課題に応える新たな集合住宅のケーススタディ「Busan Slope Housing」が、オランダの建築・都市計画事務所OMAによって提示された。朝鮮戦争時に避難者の住処として形成された密集地帯を対象に、傾斜地における街との共生を問い直す提案だ。

釜山では、戦後の急激な人口増加により山地斜面が居住地として開かれ、即興的な集落が形成された。木材や廃材を用いた仮設的な住居群は、時間とともに凝縮・変容を重ね、釜山特有の都市景観をつくり上げてきた。しかし、急勾配の坂道や老朽化した建物は、現代の生活に適応しきれていない。

高層マンションは、快適性と効率性をもたらすが、地形を平坦化し、丘陵地特有の街路生活を抑圧してしまう。別の選択肢はあるのだろうか。その問いに対し、OMAが釜山建築フェスティバル(BAF)および住宅建築局との協働によりふたつの再開発ケーススタディを提示した。釜山中心部に位置する栄州(Yeongju)と、森林に覆われた尾根に挟まれた安昌(Anchang)という対照的な2地域を選定し、それぞれに適応する設計を試みる。

OMAは建物からではなく、動線から設計を始めた。バス停、モノレール駅、学校、公園、マーケット、登山道入口、寺院といった主要な公共拠点を結ぶ歩行者回廊のネットワークを構想。この構造によって自然に「ポケット・ネイバーフッド(小規模コミュニティ)」が浮かび上がる。

OBusan Slope Housing (Anchang)

4つの住居タイプ——テラスハウス、アーバンヴィラ、長屋、タワー——を提案。高地にランドマークとなるタワー、中心にヴィラ、尾根に長屋、急傾斜部にテラスを配する戦略である。複数のタイプが適用可能な場所では、公共空間との隣接性、アクセス勾配、眺望、視覚的多様性といった条件を重ね合わせる。

Busan Slope Housing (Anchang)

また、フェンスや駐車場デッキといった境界要素を最小限に抑え、階段や踊り場、テラス、小広場などの屋外空間が共有のものとして再構成する。人の動線が街を編み、丘陵での暮らしが再び息づく風景を目指す。

Busan Slope Housing (Yeongju)

Busan Slope Housing (Yeongju)

Busan Slope Housingは、都市化と地形の調和を通じて、これからの都市デザインの方向性を問いかける設計モデルである。End