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1時間前
パリは、歴史が単に博物館に保存されているだけでなく、都市の風景の一部として生き続ける街である。代表的な文化施設やランドマークのビジュアル・アイデンティティはその証しであり、市民が共有する都市への帰属意識を育んでいる。本特集では、グラフィックデザインを通じてこの豊かな遺産を守り、発展させるという終わりなき使命に取り組むc-albumに話を聞いた。

デザインの中心にあるエンブレムは、ステンドグラスの鮮やかな輝きに着想を得て、人々の集団的想像力を喚起する。カラーパレットは、大聖堂を象徴する黄金色と、オーロラを思わせるピンク色という、ふたつの輝く光源の融合である。これは自然光の再現を目指してチームが取り組んだ探究の成果による、コンセプチュアルな手法である。
パリの継承者たち
世界屈指の文化施設は、人類の歴史を生きたまま記録するアーカイブである。しかし、急速に変化する現代社会において、これらの施設は、文化遺産を尊重しつつ多様でグローバルな観客とつながるという二重の課題に直面している。そこでは、ブランドデザインが施設の持つ使命と価値を新しい世代に向けて表現するための強力な手段となる。表層的な美学を超えたデザインは、豊かな歴史を親しみやすく現代的な言語へと変換する。パリのような多層的な文化を持つ都市では、街角のすべてが過去の痕跡を宿す。そうした都市の語りをデザインを通じて持続・発展させる責任は、ごく少数の者に託されている。その繊細な領域の最前線に立つのが、c-albumである。
1996年にグラフィックデザイナーのローラン・アンジュレールが設立したc-albumは、「Polygonia c-album(シータテハ)」という蝶の名に由来する。蝶は自由さや軽やかさを象徴するだけでなく、蝶を収集していたという彼自身の幼少期の記憶が反映されている。アンジュレールがフランスの文化的領域に与える影響力は、スイス出身のグラフィックデザイナーであるジャン・ヴィドマーのパリの事務所で過ごした10年間に基づく。ヴィドマーは、フランスの高速道路標識から、ポンピドゥー・センター(1977年)・オルセー美術館(86年)といった文化施設のビジュアル・アイデンティティまで、数々の画期的な仕事を手がけた人物であり、アンジュレールはその右腕として経験と信頼を積み重ねて自身の活動の礎とした。












