REPORT | グラフィック / 講演会・ワークショップ
2時間前
昨年末、渋谷から原宿へと拠点を移したシビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]で開催された、デザインスタジオ「NEW Creators Club」によるワークショップをレポートする。独自開発のアプリ「Urban Ink」を手に、見慣れた原宿の街から“インク”を採集し、新たなビジュアルを描き出す参加者たち。そのプロセスから見えてきた、テクノロジーと想像力が編み直す「都市と人間の新しい関係性」とは。

「都市は、想像力を要求する。」
昨年末、渋谷から原宿へと移転リニューアルしたシビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]が掲げたこのコピーは、われわれが何気なく過ごす日常に静かな問いを投じるものだった。
効率化され、迷うことなく快適に歩けるように設計された現代の都市において、私たちの想像力はなかば「不要なもの」として扱われている。しかし、CCBTから発せられたそのコピーはこの状況に異を唱える。テクノロジーやデザインが都市を覆い尽くす今こそ、能動的に街を見つめ直す「想像力」が必要だと訴えるのだ。
その思想を具現化したと言えるのが、デザインスタジオ「NEW Creators Club」が開発したアプリケーション「Urban Ink」。これは、街中で撮影した写真から好きなパーツを抽出し、デジタルの「インク(筆致)」へと変換して絵を描くアプリケーションで、リニューアルしたCCBTのビジュアルイメージにもこのツールはふんだんに用いられている。身近な風景を新たな視点で捉え、自らの手で再構築することを可能にするこのツールは、「都市は、想像力を要求する。」という問いに対するひとつのアクションといえるのではないだろうか。

昨年の12月、このUrabn Inkを用いて原宿の街から「インク」を採取する、NEW Creators Clubのワークショップが移転したばかりのCCBTで開催された。参加者には常連の親子連れから、たまたま告知を見かけて集まった大学生たちまで幅広い人々が集まった。彼らがUrban Inkというツールを手に街へ踏み出したとき、見慣れたはずの原宿の景色はどのように映ったのだろうか。
試行錯誤するなかで自然と育まれる創造性
今回のワークショップで行ったのは、Urban Inkを使ったオリジナルポスター2種類の作成。ひとつは、参加者の名前のイニシャルを象ったポスター。もうひとつは、CCBTのポスターである。講師を務めるNEW Creators Clubから説明を受けると、参加者たちはUrban Inkがダウンロードされたタブレットを手に、原宿の街へと繰り出した。

店の看板、ポスター、建物の外壁、標識、カラーコーン、道端に咲いている花、歩いている人々の服……。「インクを採集する」という目的を持って街を眺めると、あらゆるものが“インク”になりうることに気づく。「この壁の模様使えそう」「このポスターの色合い面白いね」などという会話をかわしながら、参加者たちは、みな自分が気になった景色をどんどん写真に収めていく。普段なら見過ごしてしまっている街の風景が、自分たちがこれから行う創作に役立つ事実に少しワクワクする気持ちさえ起こってくる。同時にそのプロセスを通じて、原宿という街の解像度も一段と上がっていく。
散策を終えた参加者たちは、早速撮影した写真から色や質感を抽出し、タブレット上に自身が考えるポスタービジュアルを描いていく。

Urban Inkは、写真から切り取った要素をタブレット上でなぞることで、それが引き伸ばされ絵の具のように見えるものなのだが、わずか30分ほどの制作時間のなかでも、Urban Inkの特性を利用して独自の技法を生み出す子がいたのは興味深かった。なぞるのではなく画面を点で埋め尽くす子や、複数の線を繋ぎ合わせて複雑なストロークを生み出す子。講師が教えずとも、彼らはツールの特性を直感的に理解し、自らの創造性を発揮していた。
制作後には、参加者たちがひとりずつ自身のポスターのコンセプトや特徴をプレゼンし、それに対して講師であるNEW Creators Clubのメンバーが講評する時間も設けられた。「色の配置がしっかり計算されていて、ポスターの余白がよく生かされている」「あまり考えすぎず、その時のノリを生かすのもデザインでは大事」といった、現役のプロからの言葉に参加者たちも真摯に耳を傾けていた。最終的に予定していた時間をオーバーするほど、熱中したワークショップとなった。

NEW Creators Clubが込めた想い
ワークショップ後、NEW Creators Clubのメンバーに話を伺った。今回のワークショップは、彼らにとって少し特別な感慨を持って行われたものだったという。NEW Creators Clubを率いる坂本俊太はこう語った。
「今回のCCBTのプロジェクトは、普段の仕事とは違い、ただ広告ビジュアルをつくって終わりではなく、僕らが手がけたクリエイティブに都市で暮らす人たちが参加してもらうことでようやく完成するものだと考えていたんです。だから街の人々とCCBTの間にコミュニケーションが生まれるよう、『Urban Ink』というアプリケーションを開発しました。今日こうやってワークショップができて、ようやくここまで辿り着けた感覚があります」。

NEW Creators ClubはCCBTの移転にあたって、キービジュアルの制作だけでなく、リブランディング全体に関わる仕事をした。Urban Inkや「都市は、想像力を要求する。」というコピーも、NEW Creators ClubとCCBTが長期にわたりディスカッションしていくなかで生まれたものだ。
「『都市は、想像力を要求する。』はコピーとして強い言い回しにしていますが、街ゆく人々が能動的に街を見るようになる『行動変容』まで含めて、今回のクリエイティブだと考えています。少なくとも今回参加してくれた人たちには、そこまでできたんじゃないかなと思います。それに、楽しんでいる子どもたちの姿を見て、僕らの仕事の楽しさにも気付かされた部分もあります。子どもたちにとっても、こうした『遊び』のようなことが仕事につながることを実感してもらえたら嬉しいですね」(坂本)。

「特に実際にワークショップを開いて驚いたのは、自分たちも想像していなかった方法でUrban Inkを使いこなす子たちが出てきたことです。基本的に僕らは最初にコンセプトやビジュアルを考え、広告に展開するのが仕事ですけど、それを超えてくるものが生まれたのがこうした取り組みの醍醐味だなと感じました。僕らにも得るものがあって、やってよかったと思います」(坂本)。
今回制作した2種類のポスターのうち、自らのイニシャルを象ったポスターは、ワークショップ内で印刷して持ち帰り、CCBTのポスターは、その表現を活かす形でリデザインし、原宿の街中に掲出されている。参加者たちが採取した「都市の断片」が、表現となって再び原宿の風景へと溶け込んでいく。都市と人々の間に新たな関係性が生まれたように感じる。
「都市は、想像力を要求する。」。 その言葉の真意のひとつは、完成された街をただ受け入れるのではなく、自分の視点で街を解釈し、能動的な接点を見出すことにあるのではないか 。「Urban Ink」というツールを手にした参加者たちの自由な筆致は、そんな都市との新しい向き合い方を、鮮やかに示していた。

「せっかくつくったツールや仕組みを、長期的な資産にしていってもらいたい」とNEW Creators Clubのメンバーたちは語ったが、今回のような取り組みが継続されることを強く期待したいと感じたワークショップだった。(文/AXIS 平木輝正)![]()








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