ヤコブセンの名作セブンチェアの新たな使い方を提案、机 宏典さんの
「rock7」

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建築、あるいはインテリア写真において、もっとも登場頻度の高い椅子の1つであるセブンチェア。世界中で600万脚以上の売り上げをほこるというこの椅子に新しい使い方を持ち込んだ「rock7」が、10月30日から11月4日まで開催される「デザインタイドトーキョー」の会場に展示されます。

ストックホルム在住の家具デザイナー、机 宏典さんの「rock7」についてご本人から話をうかがったのはちょうど1年近く前のことです。「ロッキングチェア」という言葉を聞いて最初は椅子の作品を想像していましたが、机さんがAXIS編集部を訪れた際に持ち込んだのは、添え木のような2本の木でした。

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ちょうどその場にあったセブンチェアの脚に、机さんは持参した2本の弓形の木を装着していきます。すると、床にふんばるようにして鎮座していたセブンチェアが、前後にゆっくりと揺れ始めました。なるほど。机さんの「rock7」という作品は、ヤコブセンの名作椅子をロッキングチェアに変えるアタッチメントだったのです。

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それから1年近くが経過し、この作品はすでにドイツなどで販売が始まっているとのこと。白樺にホワイトラッカー塗装を施したタイプと、タモにクリアラッカータイプの2種があり、日本では2万5,000円前後の価格になるそうです。セブンチェアはもともと多目的用途への対応を想定して製作されており、そのバリエーションにはアーム付きからキャスター付きタイプまでさまざまなバリエーションが存在します。机さんの「rock7」は、そんな誕生から50年近くが経過しているベストセラー製品に、新たな使い方を持ち込んだものとなります。

机さんは、その着想について、次のように語っています。

 私は長年セブン・チェアを所有、私の仕事用の椅子にしたいと考えましたが、残念ながら少し座面が低いと感じ、ある考えが浮かびました。 メタルパイプの脚にロッキングを取り付けることによって高さと座る角度を調整するという簡単な仕掛けです。体を固定すること無く、背筋を伸ばし作業に適した楽な姿勢に体が自然にポジションを見つけます。
 私は機能的で機械的なオフィスチェアよりも、アリンコ・チェアやセブン・チェアのような家庭的な素朴さを感じる椅子のほうが好きです。
 オフィスなどの仕事環境だけでなく、個人宅、カフェ、レストランや図書館やその他の場所にも適しています。現在、公共空間のインテリアデザインの多くは家庭的な空間を演出する事例が増えています。
 個人客はショップで家に簡単に持ち帰れるコンパクトな箱入りのパーツを購入し、家のセブン・チェアにねじや工具などを一切使用せず、簡単に取り付けるだけです。

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一度目にしたら忘れられない愛嬌のあるフォルムがセブンチェアの魅力の1つです。その個性が、「rock7」の装着によって、いっそう深まっていくのではないでしょうか。若手デザイナーによる新色が加わるなど、セブンチェアの楽しみ方は確実に広がっていますが、この椅子に新たな使い方を持ち込んだ机さんのアイデアは、それに勝るとも劣らない秀逸さを備えているといえるしょう。デザインタイドトーキョーの会場では、シリコン製ランプのプロトタイプ「Bud」の展示も行うとのこと。こちらもあわせてチェックしたいですね。

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rock7 design by Hironori Tsukue
サイズ:76cm x 10cm x 2.5cm(アタッチメント1つの寸法)
マテリアル:タモ材