インゴ・マウラーの遺伝子

Photo by michiho

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先日のデザインウィーク中、JIDA(日本インダストリアルデザイナー協会)のイベント「あかりサロン」が開催されました。

10月30日のオープニングトークはインゴ・マウラー氏の実娘、クロード・マウラーさんによる「インゴ・マウラーを語る」。インゴ・マウラー社の広報でもある彼女のトークはスタートから驚きでした。

日本語が上手な外国人の方は多々いらっしゃいますが、それでも公式のトークの場では通訳をつけられるのが常。しかし、彼女はマイクを取るなり「とても聞き苦しいところや、わかりにくいところがあるかもしれませんが日本語で話させていただきます」と言って始まったのです。

インゴ・マウラーが照明デザインをスタートしてオリジナルの照明器具を製作販売してきたこれまでのプロジェクトを丁寧に説明され、決して順風満帆ではなかったときのこと、会社が潰れそうになったときのこと、インゴ・マウラーが最も思い入れのある作品・商品のことなどを、エピソードを交え熱く話されていました。実娘だからこそ話せたエピソードの数々でしょう。

今年のミラノのユーロルーチェでインゴ・マウラーの展示が話題になりました。下の写真は、そのときのもの。数カ国語で壁に書かれたメッセージは2012年に白熱電球が一部生産されなくなることに対してのアンチテーゼです。

メッセージ1

「1本の蛍光灯の中にある水銀は23,000リットルの水を汚染します」。
電球がLEDや蛍光灯にとって代わられ、CO2削減になったとしても、その反面必ずや弊害は発生するのだというメッセージです。

クロードさんもこの問題についてはなんとなく苦虫を噛み潰したような雰囲気に……。実用面、環境面に配慮することは確かに大事ではありますが、人間の精神面への訴えかけも大切なはず。そんなインゴ・マウラーの想いが、新作「漁師の涙」(下の写真)から伝わってくるような気がしました。(文/マックスレイ 谷田宏江)

写真提供:スタジオ ノイ株式会社 TEL 03-5789-0420

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この新連載「tomosu」では、照明メーカー、マックスレイのデザイン・企画部門の皆さんに、光や灯りを通して、さまざまな話題を提供いただきます。