AXISモバイル・トークセッション
「ナインアワーズ」体験記

25個のカプセルユニットがずらりと並ぶフロア。男性用に3フロア、女性用に2フロアが用意されている。

▲25個のカプセルユニットがずらりと並ぶフロア。男性用に3フロア、女性用に2フロアが用意されている。

11月28日(土)に「ナインアワーズ京都寺町」で開催したAXISモバイル・トークセッションは、同ホテルをディレクションしたインダストリアルデザイナーの柴田文江さんのトークでスタート。40数名の方にご参加いただき、各回1時間半の見学会は無事に終了しました。東京など遠方から来てくださった方をはじめ、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!

エントランス。真っ白な空間にずらりと並んだシューズボックスとフロント(右手)。入り口は透明ガラスのため、「ここはいったい何ですか?」と入ってくる通行者が後を絶たなかった。

▲エントランス。真っ白な空間にずらりと並んだシューズボックスとフロント(右手)。入り口は透明ガラスのため、「ここはいったい何ですか?」と入ってくる通行者が後を絶たなかった。

見学会は、柴田さんの1階ラウンジでのコンセプト説明の後、20数名ずつ、シャワールームやカプセルユニットを見学。カプセルユニット階の扉を開けた瞬間、みんなから「わぁ」とか「おぉ」といった歓声が上がったほど、それはインパクトのある空間でした。暗闇のなかに上下2段のカプセルユニットが、ほのかな光を放ちながら、片側にずら~っと並んでいるのです。そして、床には、ユニット番号と矢印のグラフィックが整然と記され、不思議な空間に紛れ込んだかのような感覚に襲われます。

1階ラウンジで説明をする柴田文江さんと参加者の皆さん。

▲1階ラウンジで説明をする柴田文江さんと参加者の皆さん。

その後、参加者のうち約半数が、ナインアワーズに宿泊。カプセルホテルに泊まるのは初めての閉所恐怖症気味の私(編集部・谷口)も体験しました。その感想はと言うと、まずカプセルユニット内は、つなぎ目のない曲線のため、入ってしまえばサイズ感覚がなくなり、狭さや圧迫感を全く感じなかったこと。AXISギャラリーでの展覧会のときも好評だった枕やリネン類は、柴田さんが「身体に近いところは良い素材を選んでいる。身体に触れる部分で豊かさを感じて欲しい」と語ったとおり、質感の高いものでした。

シャワールームにおいて。「9h nine hours tour」と記した、お手製の小さなフラッグを掲げて説明する柴田さん(写真中央)。

▲シャワールームにおいて。「9h nine hours tour」と記した、お手製の小さなフラッグを掲げて説明する柴田さん(写真中央)。

そして、いちばんの発見は、ナインアワーズは、一般のホテルとは全く異なる考え方で成り立っていることを宿泊者もよく理解しなければならない、ということ。他者と空間を共有するためには、ルールが重要であると改めて感じました。全く見知らぬ人同士がひじょうに近い距離にいて、シャワールームを共有したり、“すっぴん”のままですれ違ったり。そのとき、どれだけの距離をもって接したり、干渉し合わないようにしていれば、互いに心地よく過ごせるのか。これは目に見えないデザインですが、最も重要な要素かもしれません。

各フロアを見学後、再びラウンジでトーク。写真左がナインアワーズを運営するキュービックの油井啓祐社長。

▲各フロアを見学後、再びラウンジでトーク。写真左がナインアワーズを運営するキュービックの油井啓祐社長。

また、見学会や試泊会では、参加者からたくさんの質問や意見が飛び出しました。そのなかで印象に残ったのは、柴田さんが「スターバックスのようにナインアワーズの考えに賛同してくれる人が集まる場にしたい」と言われたことと、どこか共通する価値観を持つ人が集まるならば、自然と会話が始まったり、情報が蓄積されていくような、小さなコミュニティが生まれることがいちばん幸せなあり方かもしれない、と感じたことです。カプセルホテルの価値観を変えるためのデザインは、実は、そこに集まる人の気持ちや行動をデザインすることであり、ホテルが完成してもなお、運営しながら育んでいくものと言えるのではないでしょうか。

ナインアワーズ京都寺町は、いよいよ12月9日にオープンです。また、AXISモバイル・トークセッションの次なる企画も進行中ですので、ご期待ください。

舞子さん

最後に、当日、見学に訪れた舞妓さんの写真。ナインアワーズの空間と舞妓さんはなぜか妙に合っているように思いませんか。

▲最後に、当日、見学に訪れた舞妓さんの写真。ナインアワーズの空間と舞妓さんはなぜか妙に合っているように思いませんか。