「藤浩志の美術展 セントラルかえるステーション〜なぜこんなにおもちゃが集まるのか?〜」

3331 Arts Chiyoda の会場に入り、数カ所で山積みにされたおびただしい量のおもちゃに唖然となる。約5万と言われるおもちゃは、ファストフードのセットについてくるキャラクターものや、ぬいぐるみ、ミニカーや怪獣のフィギュアなど千差万別だ。なかには、足がとれたヒーローや、台所セットのパーツと思われる“破片化”した痛々しいおもちゃの山もある。

▲ 藤浩志展のエントランス

▲ 入り口で来場者を出迎える「トイ・ザウルス」

これらはすべてアーティストの藤 浩志さんが考案した、おもちゃを交換するシステム「かえっこ」によって藤さんのもとに集まってきたもの。2000年に始まった「かえっこ」は、子供たちがいらなくなったおもちゃを持ち寄り、子供たち自身がおもちゃの価値(ポイント)を査定して、もらったポイントに応じて好きなおもちゃと交換できる仕組み。13年間で国内外1,000カ所、5,000回以上にわたって開催し、各地域の市民が主導するコミュニティプロジェクトに発展している。

▲ 会場入って左のゾーンでは、期間中、さまざまなアーティストによるおもちゃを使ったワークショップが開催される

▲ ワークショップの素材となる膨大なおもちゃの山

「“かえっこ”ではたくさん同じおもちゃが並ぶので、汚れていたりすると子供に選ばれない。何度かかえっこを経てなお余ったおもちゃが僕のところに帰ってきてストックされるんです」と藤さん。もともと藤家の家庭内ゴミゼロエミッションを目指して子供が発案したというもの。福岡にある自宅の倉庫に集められたおもちゃは、家族とひとりのスタッフが丁寧に分別し、保管している。

▲ 「風景 —なぜこんなにおもちゃが集まるのか?—」2012
大量のおもちゃを並べたインスタレーション

▲ ファストフードのセットについてくるプラスチック製のおもちゃは大量に集まる

▲ ぬいぐるみの山。来場した子供たちは楽しんで飛び込んでいたが、あるときふと何かに気づくかもしれない

それにしても、なぜこんなにおもちゃが集まるのか。それは藤さんの自問であり、鑑賞者一人ひとりに対して投げかけられる問いでもある。本展では、「かえっこ」の13年を辿ると同時に、「かえる(変える、還る、換える、買える)」をテーマに、膨大なおもちゃを素材としたインスタレーションやワークショップ、サイレント・オークションなどを行う。来場者が実際におもちゃに触れることで、大人も子供も小さな違和感に向き合い、意識や関係をそれぞれに「かえる」きっかけになることを狙う。

▲ 「2025 蛙の池シンポジウム」1992(写真パネル)
33年を1世代と仮定し、その1世代先である2025年の地球環境をテーマとした92年発表のインスタレーションを写真で紹介。20世紀まで国家をつくり統制してきたといえる武力や宗教による絶対的な力の崩壊と、世界人口の増加に伴う環境の変化という2つの方向から、大きな崩壊現象のイメージを図式化した

ほかにも本展では、藤さんがアーティストとしてこれまで取り組んできたプロジェクトについて、パネルや映像で紹介している。大学時代から演劇活動を通じて地域社会を舞台とした表現を志向。大学院修了後は青年海外協力隊としてパプアニューギニアに渡り、帰国後は都市計画事務所勤務を経て、92年に独立した。同年に地球環境やエネルギー資源について9人の識者や研究者にインタビューを敢行してからは、「地域資源・適正技術・協力関係」をキーワードに参加者が主体的に関わると同時に、その活動が連鎖していくためのアート制作を展開してきた。

▲ 「飛龍」2011
2010年の夏にもらい受けた、青森ねぶた1台分の廃材から生まれた龍。木材の「白龍」と今回展示されている「飛龍」の2種類がつくられた

今年、十和田市現代美術館の副館長にも就任した藤さん。東北と九州を行き来しながら、「全く違うようでどこか似ている」という2つの地域を結ぶ取り組みにも力を注いでいるという。会場で展示されている、太宰府に縁のある菅原道真をかたどったねぶたの廃材、針金と和紙を使った巨大な龍のインスタレーションもその1つだ。「両親が奄美で大島紬をつくっていたこともあるけれど、紡ぐという言葉が好きなんです。世の中を根本から変えるには大きなビジョンを打ち出すよりも、小さな活動が連鎖して、つながっていく仕組み、プラットフォームをつくっていかなければ。美術という力でそれを推進していきたい」。(文・写真/今村玲子)

▲ 会場では、中間産廃処理業者のナカダイも素材市を出店する


「藤浩志の美術展 セントラルかえるステーション
 〜なぜこんなにおもちゃが集まるのか?〜」

会 期:2012年7月15日(日)〜9月9日(日)
    12:00〜19:00
会 場:3331 Arts Chiyoda 1階メインギャラリー
休 場:毎週火曜、8月13日(月)〜16日(木)
入場料:大人700円、学生300円、子供(3歳以上)200円、親子チケット800円
主 催:アーツ千代田 3331



今村玲子/アート・デザインライター。出版社を経て2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらへ