企業のマーケティング・ツールとしてのFabLabが機能するために

FPGA-CAFE/FabLab Tsukubaのすすたわりです。FabLab Tsukubaは、元々FPGA-CAFEという電子回路分野のコミュニティ向けの小さなカフェとしてスタートしました。FPGA-CAFEをオープンしてから約1年が経過する頃、とてもよく似た思想を持つFabLabに興味を持ちました。そして、FabLabの創始者であるニール・ガーシェンフェルド氏にメールを書こうとしていた矢先、鎌倉での立ち上げ準備をされていた田中浩也先生にFabLab Japanへの参加のお誘いを受け、2011年5月からFPGA-CAFE/FabLab Tsukubaになったという経緯です。

FPGA-CAFEとしてスタートした頃は、われわれの会社である株式会社SUSUBOXの自社製品を販売するためのアンテナショップにすることを目標としていて、現在のようなレーザー加工機や基板加工機などの導入はもとより、これらを一般開放することは検討していませんでした。しかし、カフェを運営中に運良く大きな予算が採れ、FabLab標準機材の大部分を導入することができました。ただ、これらはあくまで他の開発プロジェクトのための機材で、FabLabのために揃えた機材ではありませんでした。

FabLab Tsukubaは当初からで会社で運営することを前提としています。FabLabの社内での位置付けはマーケティング・ツールです。経営面から見れば、アンテナショップは少ない宣伝費で大きな効果を得たいわけです。最近はその観点だけでもFabLabという看板は効果が期待できるようになってきたかもしれませんが、当時はまだ国内にFabLabは1つもなく、この点はほとんど期待できませんでした(現在もそんなに期待はできない?)。むしろ、FabLabは怪我の心配や機材を壊されるといったリスク、最低週1日を無料で開放するための運営費など、マイナス面のほうが大きくなる可能性もあります。それでもFabLab Tsukubaを立ち上げたのは、FabLabコミュニティに参加することの効果が期待できたからです。特にFabLabコミュニティは異分野の交流が盛んであると感じており、マーケティングの観点からは、これまでアクセスが難しかった方面への広がりを感じています。

継続するポイントの1つは、前述のリソースをFabLabを始めるために揃えたのではない、ということだと思います。もともと他の事業のために揃えたリソースであれば、その維持費は事業の経費に含まれているからです。あとは前述のリスク回避に掛かる経費を営業活動費と見なせるかどうかではないでしょうか? もちろん、これはFabLabを維持・継続するために模索している1つの手法に過ぎません。(文/すすわたり、FPGA-CAFE/FabLab Tsukuba)

この連載はFabLab Japanのメンバーの皆さんに、リレー方式で、FabLabとその周辺の話題についてレポートしていただきます。