「リビング&デザイン 2012 住まいと暮らしのリノベーション TOTAL INTERIOR」本日最終日

「伝統産業は消滅、家具業界は壊滅です」と話すのは、工業デザイナーの喜多俊之氏。かねてより、“衰退”と“崩壊”という言葉で業界の将来に憂いを抱いていたが、氏の言葉にならえば事態はさらに悪化の一途をたどっているようだ。

自ら総合プロデューサーとして陣頭指揮をとる「リビング&デザイン」は、そんな状況を好転させたいとの思いからスタートさせた。住環境関連の多彩なセクターが集う総合見本市は、今年で4回目を迎える。開催を目前に控えた喜多氏は、「人と人とのコミュニケーションを豊かにし、日本の住環境の質を高め、マーケットを活性化したい」と自らを鼓舞するように、今年の意気込みを語る。

「住宅は人生の舞台。これを活性化しないと発展がない」というリビング&デザインの掲げる主張は、主会場が一新されても変わらない。「日本の集合住宅の面積は欧州のみならず、韓国やシンガポールなどと比べても狭い。そこにたくさんのものを詰め込もうとするから、さらに身動きがとれなくなる。限られた空間であっても、ちょっとしたアイデアや工夫次第で風通しがよくなり、新しい空間が生まれることを示していきたい」(喜多氏)。

そうしたメッセージの発信は見本市のメイン会場となる中之島の大阪国際会議場(グランキューブ大阪)だけに止まらない。御堂筋エリアを中心としたインテリアショップや水回り関連製品のショールームなどがリビング&デザインの提案に賛同し、シティ会場の一部として新たな住まいづくりや暮らし方の提案に一役買う。さらに、製品の魅力をアピールするだけでなく、パーティやトークイベントなどを各ショップが独自に企画し、人の集いをきっかけに会話や議論が育まれ、コミュニケーションが大いに活発になることにも期待を寄せる。

▲シティ会場で展開されている「黄色い椅子プロジェクト」は、会場各所に置かれた黄色い椅子を通じ、ちょっとした工夫で空間が変わることを促す試み。写真は牛乳パックの廃材を活用した喜多俊之氏のデザイン。抽選で20名にこの椅子が当たるスタンプラリーも同時開催中。撮影協力 : アルフレックスショップ大阪。

「自宅に人を気軽に招き入れる――そういう文化を根付かせたいと思っているんです」と語るのは、リビング&デザインの発足当初からコーディネーターとして関わってきたインテリア&テキスタイルデザイナーの川上玲子氏だ。北欧のインテリアとライフスタイルに精通する川上氏は、「この地の暮らしがかくも魅力的に映るのは、デザインが人々の生活にしっかり根付いているから。限られたアイテムを組み合わせて暮らしの質をアップさせる能力に長けていることで、シンプルながら豊かなインテリア空間が醸成される」と話す。

こうしたスキルを養うために「自宅に人を呼び、自らの感性で空間にちょっとした工夫を凝らしてみることが大切」というのが川上氏の提案だ。「他者の目をきっかけに、インテリアの整理やしつらいへの意識が高まれば、おのずと空間は魅力的なものへと昇華する」といい、25日(木)に自ら登壇するセミナー(12:30分~、会場:大阪国際会議場10F会議室)では、「家がサロン」になるというテーマで同様の主張を展開する予定だ。

▲ミラノ・フォーリサローネの様子。市内全体を巻き込み、一般市民や観光客も自由にデザインを楽しめるイベントとして毎年多くの来場者が世界中から押し寄せる。このイベントを立ち上げたジルダ・ボイヤルディ氏の講演は10月25日(木)の14時〜、大阪国際会議場10F会議室1003にて。入場料は1,000円。

見本市の会期中には、他にも暮らしやデザインのヒントにつながる講演会やセミナー(プログラムの詳細はこちら)が目白押しだ。川上氏のセミナーの後には、現在「インテルニ」誌の総合ディレクターを務めるジルダ・ボイヤルディ氏をイタリアより招き、「都市活性化の成功事例をつくったミラノ・フォーリサローネ」と題した特別講演が予定される。ミラノサローネ期間中に市内の約500会場で展開される一大イベントの仕掛人であるボイヤルディ氏は、デザイン産業の振興によって地域経済の発展や新たな産業クラスターの創出に大きな手腕を発揮してきた人物。「リビング&デザインの運営において模範とするところが多い」と喜多氏が認めるように、その知見に学ぶところは少なくない。クリエイティブ思考という付加価値を新たな拠り所に、製造業の街から高度な産業都市へと脱皮が叫ばれる関西エリアだけに、この地でモノづくりに携わる人には必聴の講演になることだろう。

▲「他の見本市と比べ、会場がひじょうに美しく整えられている」と川上玲子氏が語るリビング&デザインの会場デザインは、初回から一貫して間宮吉彦氏が手がける。今回は、会場中央正面の1コマブースに六角形のデザインを取り入れ、それらをハニカム状に連ねて、力強く有機的なシーンをつくり出す。

「住まいと暮らしのリノベーション TOTAL INTERIOR」をテーマとするリビング&デザイン 2012は、大阪国際会議場をメイン会場とする見本市が、10月24日(水)~26日(金)まで、国内83社、海外7社のメーカーやデザイン事務所の参加によって開催される。毎回高い評価を獲得している間宮吉彦氏(リビング&デザイン クリエイティブディレクター)の会場デザインも含め、多彩な魅力の詰まった3日間となることは間違いない。また、一足早くスタートした街中でのイベントは、28日(日)まで開かれる。企業関係者だけでなく、一般の生活者も気軽に足を運べるインテリアイベントの活況が、「伝統産業や家具業界の浮上するきっかけにつながる」(喜多氏)ことを期待したい。

LIVING & DESIGN 2012(リビング&デザイン 2012)
メイン会場
会場:中之島 大阪国際会議場(グランキューブ大阪/大阪市北区中之島 5-3-51
会期:2012年10月24日(水)〜10月26日(金) 10:00から18:00(最終日は17:00まで)
入場料:1,000円(招待状持参者、事前登録者無料) 事前登録は、http://www.living-and-design.comより。
主催:LIVING & DESIGN 2012実行委員会

シティ会場
会場:大阪・御堂筋界隈を中心(参加ショップ、企業ショールーム各所)
会期:2012年10月20日(土)〜10月28日(日)
参加企業:大丸心斎橋店、ユニオン、アルフレックス、カルテル、トーヨーキッチン&リビング、イルムス、エルメスなど68カ所 (詳細は、http://www.living-and-design.com/city/よりご確認ください)
主催:LIVING & DESIGN 2012実行委員会

「LIVING & DESIGN 2012」に関する各種問い合わせは、Tel&Fax:06-6233-1979、
もしくはE-mail:info2012@living-and-design.comまで。