トラフ建築設計事務所 x SACLAB
「遮るだけではない、多様な境界として、機能を組み込んだ透明感のあるフェンス」

日本の住宅地に特有の塀(フェンス)による敷地の囲い込み。このフェンスによって、日本の住宅地の街路は形づくられていると言える。このプロジェクトでは、自身の敷地に目を向けるのではなく、街路や街との関係がどうあるべきか、少し引いた視点で考えたいと思った。

「南洋堂書店」 Photo by Fuminari Yoshitsugu

2011年に手がけた、建築専門書店、南洋堂の屋外に設置する本棚の計画では、通りに向かって張り出す本棚を提案した。こうすることで、通りを歩く人が気軽に本を手に取ることができる。これまで内と外を遮るものでしかなかった外壁を本棚化することで、書店が街に溶け込み、いつもの通りが急に身近な存在に思えてくる。遮る、もしくは囲い込むだけではない、もっと多様な境界のあり方を提案したいと考えた。

「大岡山の住宅」 Photos by Taichi Ano

「大岡山の住宅」は、東京の住宅地に建つ木造3階建ての二世帯住宅。間口4.7m、奥行き16.5mという細長い形状で、周囲3方に隣地建物が近接し、北面のみ接道している。この敷地条件から、斜線規制よって決定される最大ヴォリュームの中で、間口方向を圧迫する廊下を極力なくすため、玄関および階段を中央に設け、南北に寝室ゾーンとパブリックゾーンとを分割する平面形を基本構成とした。

間口の狭い細長い形状の空間には、置き家具を置いただけで奥行方向の動線が寸断されてしまうため、窓周りや短辺方向に飛び出す構造体を家具化することで、平面的に圧迫しない計画を行った。開口部は奥行を持たせ、背もたれを付けることでベンチとして機能する。奥行と床面からの高さを操作することで、子供にとっては部屋のようにも使うことができる。

壁に厚みを持たせて空間化することで、間口の狭さを解消しつつも、内と外を仕切る境界壁以上の多様な境界となることを試みた。

「北大路の住宅」 Photos by Taichi Ano

「北大路の住宅」は、京都の閑静な住宅地に建つ住宅。開放的な明るい空間でありつつ、プライバシーを確保した住宅を望まれた。プライバシーの確保しやすい2階だけで普段の生活が完結するよう、敷地に沿って壁を立上げ、生活空間を最大限にとる。中央に大きく広間を配置し、その周りを個室や水周り・動線等の設備空間が取り囲むことで、生活の大半を過ごす広間と外の通りとの間に距離を保つと同時に、廊下を必要としないコンパクトな構成とした。

広間の大小様々な家具は、硬い外殻と対比的に内部空間の柔らかい仕切りとなることを考えた。道路に面した開口部を極力避けるよう、中庭となる外部吹抜けやテラスを要所に設け、採光と通風を確保する。そのため広間からは、どこにいても外部が感じられる。

吹き抜けや個室といった空間の緩衝帯が、外との境界となるような構成を目指した。

トラフ建築設計事務所
鈴野浩一
/1973年神奈川県生まれ。96年東京理科大学工学部建築学科卒業。98年横浜国立大学大学院工学部建築学専攻修士課程修了。98~2001年シーラカンス K&H 勤務。02~03年Kerstin Thompson Architects勤務。04年禿真哉と共にトラフ建築設計事務所を設立。05~08年東京理科大学非常勤講師、08年~昭和女子大学非常勤講師、10~11年共立女子大学非常勤講師、10年~武蔵野美術大学非常勤講師、12年~多摩美術大学非常勤講師、14年〜京都精華大学客員教授をを務める。

禿 真哉/1974年島根県生まれ。97年明治大学理工学部建築学科卒業。99年同大学大学院修士課程修了。2000~03年青木淳建築計画事務所勤務。04年鈴野浩一と共にトラフ建築設計事務所を設立。08年~昭和女子大学非常勤講師を務める。

http://torafu.com/

2014年1月17日(金)からクリエイションギャラリーG8でトラフ建築設計事務所個展「ここをホッチキスでとめてください。」を開催。詳細はこちら

三協アルミ「SACLAB(Sankyo Alumi Creative Labolatory)」のホームページはこちら