REPORT | 建築
2014.03.13 15:46
建築家の伊東豊雄さんが、未来の社会を築く子どもたちに早い段階で「建築」の楽しさを知ってもらいたいと始めた「子ども建築塾」。塾生は小学2年生から小学6年生の子どもたちです。そのみなさんの1年間の勉強成果を発表する講評会が開かれました。
子どもたちは、塾長の伊東豊雄さん、建築家の太田浩史さん、建築史家の村松 伸さんから、1年をかけて前期は「いえ」、後期は「まち」をテーマに建築の基礎を学びました。後期の「まち」の授業では、伊東建築塾のある恵比寿をみんなで歩きながら、恵比寿の歴史や成り立ち、人が集まることによって生まれる街の賑わいについて考えたそうです。そして、恵比須にどんな建築があったら楽しい街になるのだろうと考え、ひとりひとりが敷地選びから、模型制作、プレゼンテーションボードの作成まで、ティーチングアシスタントの力を借りながら進めていきました。
▲ 発表会の会場となったのは東京大学。講評する建築家や大勢の親御さんを前に緊張を隠せない子どもたちに向けて伊東さんは、「僕も先日、国内設計競技のために有名な建築家の審査員を前にプレゼンテーションをしてきたばかり。とても緊張しました。だからみんなの気持ちもよくわかる」と励ましの言葉。
▲ 「◯◯とともに暮らす」をキーワードに、子どもたちからは恵比須の街らしさを生かした提案が発表されました。「水とともに暮らす」に取り組んだ5年生のレオさんが提案したのは「サブマリン広場」。有栖川記念公園内の池を立地に選び、池の中にはカモや魚が多く住んでいることを発見。こうした生き物を水の中から覗いてみたいと考え、水面下に広がる潜水艦のような空間を創出しました。独創的なアイデアであり、模型の完成度の高さも先生たちから絶賛されました。
▲ 「おばけとともに暮らす」ことに取り組んだのは6年生の雀部 遼さん。首都高速2号目黒線のそば、雑草が生い茂り、おばけが出そうな場所におばけも人も集いたくなるような「心も丸くなる家」を提案しました。公園やシェアハウスをつくり、おばけというおっかない存在に近づいて、知ろう、共存しようとする姿勢が立派です。
▲ 「生き物とともに暮らす」ことに取り組んだのは6年生の坂本桃佳さん。渋谷川のそばにあるタコ公園に、人と渡り鳥が集う場所「色鳥どりのタコ公園」を提案しました。空高く飛ぶ渡り鳥が俯瞰して下りて休みたくなるように、上から見た公園づくりにこだわった点が見事です。
3時間に及ぶ子どもたちの力作プレゼンテーションを終えて、伊東さんからは「子どもたちから出てくるアイデアは本当にすばらしい。子ども建築塾の成果を、大人向けの建築塾のカリキュラムに取り込んだら、いい建築家が生まれるんじゃないかと思うくらいです」と感想の言葉。
子どもたちは我を押し通すのではなく、建築家の先生からの指摘やアドバイスを受けながら、当初のプランを何度も練り直していったそうです。自分だけが欲しいものではだめで、多くの人が楽しめる場所をつくっているということを理解し、妥協すること、そして、何よりもほかの生き物、おばけの身になって考えてあげている点に感心させられました。(写真・文/長谷川香苗)