廃棄物と社会を
「つなぐ」仕事

もう、1年も前の話ですが、「ナカダイさんのやろうとしていることは、”つなぐ“ことなのかもしれないですね。人、モノ、場所、機会……いろんなコトをつなぐビジネスだと思うよ」とあるデザイナーの方に言われたことがあります。マテリアルをたくさんストックし、講演やワークショップ、産廃サミットなどのイベントをやって、たくさんの人、モノとの出会いがあり、確かに“つなぐ”ということだなと思った記憶があります。同時に、それが自分の軸にある考え方なのか?と。確かに“つなぐ”は大事な要素だが、プラスαもあるのではとも思いました。ただ、間違いなく、そのころからこの“つなぐ”という言葉を意識してきました。

4月から講師をした丸の内朝大学のクラス。月曜の朝7時15分から8時15分までの朝活です。「モノすごい発明クラス」という授業と工場見学を通して、廃棄物の実情と現場を知り、廃棄物を身近に捉え、どう生かすかを考えるのがお題です。私が受け持ったクラスですから、みなさんがんばりましたというだけであれば、特にここで書かなくても良い話なのですが、同じ目的の集団の“つながり感”には脅威すら感じました。私がつなげたのではなく、それぞれがつながったのです。“つながる”んですね。“つなぐ”、“つなげる”ではなく。言葉遊びのようですが、大きな違いで、これで私自身が腑に落ちました。1年前に言われたつなぐ仕事。ナカダイがさまざまなチャレンジをする、提案することで、さまざまなつながりができる。意図してではなく、必然的にといったほうが正しいかも知れません。

少し、ナカダイのことについて書きたいと思います。つなぐという効果は、ナカダイ社内でも威力を発揮しています。たくさんの来場者とメディアへの露出でリサイクルの現場への注目度が上がりました。会社のブランド価値が上がることによる売り上げ増、新規顧客増は狙いどおりなのですが、最も効果があったのは生産性の向上です。リサイクル、リユース率99.7パーセント。ちょっと自慢です。自分たちの仕事に誇りを持ってない集団に、この数字はたたき出せません。要素はさまざまで複合的です。ただ、確実に社員の参加意欲は増大し、データで見る限り、30パーセント強の生産効率の向上が確認できます。利益率は過去最高を更新しています。ここでも、“つながる”です。私がつないだのではなく、社員ひとりひとりが自らの意思でつながること、コミュニケーションをとることが結果を生んでいると感じています。

私自身も、“つながる”を実感しています。ここ数年でお会いした方々のなかには、なぜかこんなことできないかという思いを抱き、方向性を自分の中で整理し、それを実行に移せる方が何人もいらっしゃいました。人、モノ、機会、すべてについて必然的な連携が起こっています。で、この連携がすべてお金を生むことではないというのが、特筆すべき点だと思います。

当初から、こうしよう、ああしようとコンセプトやウンチクを考えてきましたが、最終的にはそれに共感した社員や関係者がそれぞれでつながること、そのきっかけと機会をつくることこそ、これからのビジネスの本筋ではないかと考えるようになりました。ナカダイが何かをやったから達成したのではなく、それをきっかけに、関わったそれぞれの人が強みを生かしてつながることで達成できる。そうと考えると、継続性も連動性も、そして、楽しさも増します。お金ではない価値がそこにはあると実感できます。そして、ビジネスになり得る価値であると実感できます。多様な価値感とは、ビジネスとして人、モノを評価する尺度の変化なのかもしれません。もう1度、社内を見つめて、過去のデータを整理し、これからのビジネスモデルを考える時期だと感じてます。(文/中台澄之)

この連載は株式会社ナカダイ前橋支店支店長・中台澄之さんに産業廃棄物に関するさまざまな話題を提供していただきます。