シンガポールに行ったら絶対見ておきたい建築11【2015年版】

2014年に「ナショナル・デザイン・センター」が誕生し、デザイン振興に力を入れるシンガポール。メーカーのデザイン部門や国際的なデザイン事務所が、この地にアジア拠点を構えるケースも増えている。では、シンガポールデザイン界では今どのような動きがあるのか。現地ジャーナリストがシンガポールのデザイン事情を複数回に分けてレポートする。

初回は、世界各国の著名建築家の作品が集まる、住宅、商業施設、植物園といった見どころ満載の建築案内。形や構造のユニークさとともに、緑や雨水を積極的に取り入れるエコロジカルな建物の姿が見えてくる。

文/大島さや

1:リフレクションズ・アット・ケッペルベイ(Reflections at Keppel Bay)

建築家ダニエル・リベスキンドの手がける住宅プロジェクトとしてはアジア初。港に面した2011年完成の巨大な住宅群で、カーブを描いた特徴的な塔が橋によってつながれている。24階建てから41階建てまでの6つの高層マンションと、11の低層アパートで構成。各高層マンションの屋上には、空を指すように尖ったフレームで囲まれた、緑豊かな庭が広がっている。周辺に高層ビルがないため、ひじょうに目立つランドマーク的存在でもある。

2:ドリードン・コンドミニアム(d’leedon condominiums)

2015年12月末に完成予定の、計7棟の36階建て高層マンション。建築家のザハ・ハディドが手がけるシンガポール初のコンドミニアムとして完成前から多くの話題を呼んでいる。ブキ・ティマ自然保護区とボタニック・ガーデンの豊かな自然が敷地内に流れ込むように、景観には多くの緑が取り入れられている。敷地内の70%を占める共有施設には、さまざまな形のプール、ジム、スパなどが流線型に配されている。それぞれテーマが異なる複数の庭園とともに、居住者たちに豊かな暮らしを提供する。現在、ショールームとして公開されているインテリアデザインも、特徴的な曲線を描き話題だ。


▲©Zaha Hadid Architects

3:ナンヤン工科大学(Nanyang Technological University)

1986年の開校時に丹下健三が設計した巨大な校舎が今も残るナンヤン工科大学(南洋理工大学)。2004年には「建物でない建物」のコンセプトのもと、4億ドルをかけてアート、デザイン、メディアといった美術学部のキャンパスが、雨水を蓄え、建物とその周辺温度を下げるグリーンルーフを備えて建設された。そのグリーンルーフは、学生たちのイマジネーションをかき立てる開放的なフリースペースでもある。また、5階建ての一面を覆うガラスには、直射日光を和らげるための特殊加工が施されている。設計を手がけたのは、「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」も担当したシンガポールのCPG コンサルタント。


▲©CPG Consultants

また、同大学で新たに建設される「ラーニング・ハブ」は、英国のトマス・ヘザウィックのデザイン。コンピュータやインターネットの普及などによって変わり続ける「学び」の形態を、学生と教育者のコミュニケーションの促進と捉え、多目的スペースを多く設けている。蜂の巣のような円筒形が寄り添う8階建ての建物内部は、従来の教室とは全く異なる円形のレクチャールーム。学生が一方的に講義を聞くのではなく、教育者とコラボレーションして学ぶための空間として考えられている。

▲©Heatherwick Studio

4:パールバンク・アパートメント(Pearl Bank Apartment)

1976年に、シンガポール初の高層住宅として誕生。113mの高さの38階建ての円形タワーは、当時まだ珍しかった高速度のエレベーターや立体駐車場を完備。シンガポールの都市部ではあまり見られない小高い丘の上にあるため、低層階からもオートラム・パークの自然とチャイナタウンの街並みを一望でき、高層階からはセントーサ島が見えるほど眺望が良い。馬の蹄のような形のタワーは、午後の強い日差しを避けるためにキッチンを備えたリビングが内側を向いている。各階が段違いの幾何学的な構造で、各住戸は二層のメゾネットになっている。


▲©Choo Yut Shing

5:シンガポール・フライヤー(Singapore Flyer)

黒川紀章とシンガポールの建築家により2008年に設計された世界最大級の観覧車。ゴンドラを支える直径150mの外輪は、シンガポールの景観を損ねないためのミニマルな構造で、中心軸から自転車のホイールのようにスポーク状に伸びた112本のワイヤーで外輪を支えている。最高到達地点は高さ約165m、42階建てのビルに相当する。エアコンを完備した28個のゴンドラは、それぞれ定員が28名で、観覧車としてはかなり大きなつくり。2010年にはその安全性の高い構造が評価され、「BCA エンジニアリング・セーフティー・アワード」を受賞。37分かけて一周し、ゴンドラを貸し切ってディナーを楽しめる企画やウェディングプランも人気だ。


▲©Singapore Flyer Pte Ltd.

6:エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ(Esplanade – Theaters on the Bay)

シンガポールの文化遺産保護のために献身的に活動するコー・ショウ・チュアン率いるDPアーキテクトによってデザインされ、2002年に国のパフォーマンスアート文化の中心を担う目的でオープンした。シンガポールでよく目にするフルーツの王様、ドリアンを思わせるトゲトゲした円形型が特徴。トゲ部分は、三角形のフレームで囲われたガラスとシャンパンカラーのシェードでできており、日中は直射日光を軽減しながら屋内に取り込み、夜間は街に向かって特徴的な光を放つ。2006年にはシンガポールで最も権威のある「プレジデント・デザイン・アワード」のデザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞している。

7:インターレイス(The Interlace)

ブロックが蜂の巣のように積み上げられた高級アパートメント。170,000㎡、東京ドーム約4個分の敷地に建つ巨大な建物。小さな敷地により多くの居住スペースを確保するため高層ビルが多いシンガポールにおいて、6階、12階、18階、24階と高低差をつけることで横長のデザインを実現している。複雑に積み重ねられたブロックとブロックの間にはプールや中庭が設けられ、プライバシーを保ちながら視界を遮ることなく開放感を演出する。ドイツ出身の建築家オレ・スケーレンが、OMAとして手がけた最後のプロジェクト。

▲©OMA, Ole Scheeren Photo by Iwan Baan

8:パークロイヤル・オン・ピッカリング(PARKROYAL on Pickering)

シンガポールで今最も有力な建築家ユニットWOHAが手がけ、2013年にオープン。「ホテル・イン・ザ・ガーデン」というコンセプトのもと、敷地内のさまざまな場所が緑化され、なかでも建物の外壁に沿って4階ごとにつくられたグリーンガーデンは、空中に浮くジャングルのよう。草木を育てるために雨水を利用するなど、随所に最新鋭のエコシステムを採用。徹底した環境への配慮が高く評価され、シンガポール政府が実施する環境配慮型建築物の推奨認定制度「グリーンマーク」のプラチナ賞、太陽光発電パイオニア賞など、さまざまなアワードを受賞している。


▲Photos by Patrick Bingham Hall

8:サザン・リッジーズ(Southern Ridges)

2002年に開設された3つの国立公園を結ぶ全長約10kmの遊歩道。アップダウンのある熱帯雨林を通り抜けながら、車道の36m上から街並みを眺めるなど、自然と都市を同時に楽しめる人気のトレッキングスポットだ。なかでも有名なのは、ヘンダーソンウェーブと呼ばれる歩道橋。波打つように躍動感のある形状は、橋を渡るサイクリストや歩行者に最高の景色を提供できるよう計算されている。カーブの内側には長い椅子が設けられ、屋根の下で休憩したり雨宿りをすることができる。天然のチーク材を使用したウッドデッキは、ランナーをはじめ利用者の足に優しいと好評だ。


▲Images courtesy of Urban Redevelopment Authority, Singapore

9:ルーカス・フィルム・シンガポール(Lucas Film Singapore)

2014年1月に完成したガラスで覆われたV字型の建物は、映画「スターウォーズ」に登場する乗り物「サンドクローラー」がコンセプト。外部を覆うガラスには、内側に金属製のドット模様の特殊加工が施され、強い日差しを軽減しながら、外部に光が美しく反射する。また、V字型の内側に広がるオープンスペースと、各階のバルコニーには本格的な植物園があり、映画のセットを思わせるような非現実的な空間が広がる。誰もが自由に歩けるオープンスペースに対し、地上より高い位置にオフィスを設けることによって、映画制作のための機密性を確保している。約1,400人のスタッフを有する世界的な建築組織アエダスのアンドリュー・ブロムバーグがデザインした。

10:マリーナ・ベイ・サンズ(Marina Bay Sands)

リゾートホテル、カジノ、ショッピング施設などからなる3つのタワーの最上階、地上200mから街を見下ろす150m幅のインフィニティ・プールで知られる、現在のシンガポールのシンボルともいえる建物。屋上に建設された船のような形の「スカイパーク」は、全長約340m。敷地内の「アート・サイエンス・ミュージアム」と合わせ、イスラエル系カナダ人建築家のモシェ・サフディが設計した。蓮の花からインスパイアされた形と言われるが、「人々を招き入れる手」を意味する「welcoming hand」とも呼ばれている。

▲©Marina Bay Sands

11:ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ(Gardens by the Bay)

英国の建築家ウィルキンソン・エアが設計した巨大な公共植物園。2012年にオープンし、現在25万種の植物が生息する。「スーパーツリー」と名付けられた50mの高さのタワーは、雨水を貯水し、貝殻型の巨大グリーンハウスに送水する役割を担う。スーパーツリーを包み込む血管のような構造は、数千種類の草木のツタと絡まり、タワー自体が巨大な生命体のように見える。太陽光発電によるスーパーツリーのライトアップは必見。100haの土地はすべて埋め立て地からなり、街の緑化計画に力を入れるシンガポールの方針を見事に具現化している。入場無料。


●AXISギャラリーでは、2月5日(木)にシンガポールのクリエイターを招いたトークイベントを開催いたします。テーマやスピーカーなどの詳細は、サイトをご覧ください。 終了しました。

●また、本ブログで紹介した施設のなかには、シンガポール政府観光局のサイトに詳細が掲載されているものもあります。