vol.4
「クリエイターインタビュー:WOHA」


緑をまとったダイナミックな建築を創出
WOHA

▲ポートレート/ウォン・マン・サン(左)とリチャード・ハッセル Photo by Mark Teo

インタビュー・文/大島さや

Photos by Patrick Bingham-Hall


シンガポール人建築家、ウォン・マン・サン(Wong Mun Summ)とオーストラリア人建築家のリチャード・ハッセル(Richard Hassell)が1994年に創立したWOHAは、80名を超えるスタッフを抱えた建築事務所。これまでにシンガポールの2つの地下鉄駅をはじめ、中国や東南アジアのショッピングモール、高層マンション、ラグジュアリーリゾートといった大型施設を手がけている。一度目にしたら忘れられない、ダイナミックで印象的なデザインに潜む彼らの哲学には、環境に最大限に配慮するアイデアと、気候を生かす革新的な技術が共存する。世界の著名建築家が集い毎年シンガポールで開かれる「ワールド・アーキテクチャー・フェスティバル」では、2009年と2010年の2年連続で2つの賞を受賞した。

▲ Stadium Mass Rapid Transit Station, Singapore (2008)

シンガポールの建築で初めてアーガー・ハーン建築賞(イスラム社会の建物を対象とした建築賞)を受賞した「No.1 モ-ルメイン・ライズ」では、28階建てマンションの南側に設けた「モンスーン・ウィンドウ」で話題を呼んだ。名前の通り、熱帯地域特有の雨季に吹く冷たい風を室内に取り込むために、窓に対して垂直なパネル付きガラス戸という仕組みを考案した。また、北側の外壁をドッドの空いたアルミ製スクリーンで覆うことで強い日差しを妨げつつ、ビルの景観は確保。環境に配慮し問題を解決するWOHAの戦略は、本レポートvol.1の「建築案内」で紹介した「パークロイヤル・オン・ピッカリング」でも貫かれている。「われわれが生み出すデザインは、視覚的、哲学的、そして素材的な要素が、どの角度から眺めても意味をなすように、その土地と素材にまつわる文化、気候、光などに基づいて構築されています」とリチャードは言う。

▲ No.1 Moulmein Rise, Singapore (2003)

現在進行中のプロジェクトのなかには、シンガポール国際空港の第3ターミナルに隣接するホテルの増築「クラウンプラザ・エクステンション」がある。本プロジェクトのために新たなプレハブ工法を考案し、243室の組み立て施工がたった2〜3週間で完成するという。

また、シンガポールを拠点とするインテリアブランド「Industry+」から初の家具コレクションを発表予定だ。過去20年の建築プロジェクトで多くの家具をデザインしながら、製品として販売されることはなかっただけに期待が高まる。WOHAの建築哲学はそのままに、「建築がハードであればインテリアはソフトに、また建築が繊細であればインテリアはその逆というように、ダイナミックなバランスを生み出すインテリア」を、3月10日から開かれるシンガポール・デザイン・ウィークの会期にあわせて提案していくそうだ。

▲ PARKROYAL on Pickering, Singapore (2013)


●本シリーズは「シンガポールデザインレポート」からご覧いただけます。