第6回
「Dチーム MONSTER」

連載第6回目は、 いすゞ自動車デザインセンターでカラーを担当している前田靖之がお送りします。私たちDチームは発足当初から「後ろを振り返らない、男らしいクルマ」をコンセプトに据えデザインをしました。そのコンセプトから「前傾姿勢乗車」というドライビングポジションを採用し、その魅力を最大限に引き出すシャシーレイアウトやスタイリングに注力しました。

モチーフは「モンスター」
まずはこのクルマの成り立ちから。デザインのテーマは「凶暴モンスター×強靭アーマー」。最初、前傾姿勢の乗車スタイルから相手に戦いを挑む印象を受け、その闘争本能のようなものからモンスターのイメージが浮かび上がってきました。ですが、モンスターといってもさまざまなイメージがあります。メンバーの中でも「アメコミに出てくる緑色のアイツ!」とか、「紫色のロボット的な!」と方向性がバラバラ……。

そんな中、メンバーのひとりから「ドライバーが不在になってる」との投げかけが発せられました。そうでしたそうでした! ということで、ドライバーが生き物を操る。相手が凶暴なら無理やり抑えつける。そんな男気あふれる気持ちを盛り込んだテーマとして「凶暴モンスター×強靭アーマー」が生まれ、一気にスタイリングの方向性がまとまりました。


「ORZ/Otoko-Rashii-Ze」
紆余曲折と切磋琢磨を繰り返し完成した車両。「ORZ」と名付けました。これまでの私たちの姿勢を2つの側面から表した最適な名前だと自信を持っています。そんなクルマの詳細を。

「凶暴モンスター×強靭アーマー」を、形と色のメリハリによって表現しています。生命感を感じさせるマットオレンジはモンスターパートとなっており、筋肉の緊張感やおおらかさをメリハリのある面質やキャラクターを用いて表現。対して無機質なガンメタリックを用いたアーマーパートでは、内側にモンスターの体を感じさせつつもエッジの効いたカタチで、重く硬質な印象を持たせました。

全体のスタイルはワイドアンドローを意識したものになっていて、低く構えたその顔によって、虎視眈々と対戦相手を威嚇するような印象を持たせました。サイドではアーマーパートの「ツノ」に全体よりも鋭さを持たせることで動き出しそうな雰囲気を演出しています。足元にはモンスターの爪をイメージしたホイールを持たせ、全体の雰囲気をまとめています。

ドライブトレインにも男気を
メカニカル部分では車両後方にペダルを、前方にステアリング(ステアリングバーにドライバーの肘を載せる)をレイアウト。ペダルから生み出されるパワーをチェーンを介して車体中央のシャフトに伝え、リア両輪に再伝達する構成となっています。また操舵は上半身をよじるように左右に振ることでステアするものとなっています。イメージしにくいかもしれませんが、ほぼうつ伏せになるようなポジションです。このポジションによって、車両とドライバーの視点が重なるような感覚を覚え一体感のある乗車体験が得られます。

レース結果は置いといて
最後に、レース中にメンバーが発した一言があります。「みなさん、機会があればぜひ乗ってみてください。とっても辛いんです!」。そうなんです。このいばら道のごとき漕ぎ味の悪さも含め、男気あふれるものになりました。機会があればシートに座ってみてください。その辛さを実感することができますよ。(文/いすゞ自動車 デザインセンター 前田靖之)

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