第7回
「Eチーム SUMIDA M Type Bus」

みなさんこんにちは。いすゞ自動車 試作部いちのお祭り男・小川勇一とカート男・・山下裕也です。私たち試作部は技能伝承教育の一環として、いすゞ歴代車のレストア活動に取り組んでいます。今回はわれわれEチームの「SUMIDA M Type Bus」、通称「コスミダ」をご紹介します。

「スミダ」の子
私たちは、いすゞがかつて製造した、国内に現存する実走可能な国産最古のバス「スミダM型」(レストアしてThe 42rd TOKYO MOTOR SHOW 2011へ出品)をモチーフに、ペダルカーのデザインに落とし込みました。完成したペダルカーには「スミダ」というそのままの名では面白さを感じられないと思い、考えついた名前はスミダの子であるかのような愛くるしいカタチから「コスミダ」。

「昔ながら」と「遊び心」
活動のコンセプトは「こころみにつくる」。ふだんの業務で、デザイナーや設計者のものづくりへの想いをカタチにするのが試作です。どんな結果になるかわからないが、まずはつくってみる。つまり「こころみにつくる」ことが「試作」。

試作と聞くと、常に新しい形を連想するかもしれませんが、今回のテーマは「昔ながら」と「遊び心」。「昔ながら」とは、どこか温かく、懐かしい感じのする落ち着いた形であると思ってます。また、「遊び心」については、実車にもある「STOP」文字のブレーキランプを再現し、ステアリングはスミダの型式であるM型の「M」をイメージし製作したことで、機能優先のデザインでは得られないカタチを表現しました。

シャシの製作では、スミダの特徴でもあるフロントタイヤの角度(ポジティブキャンバー)や、タイヤ切れ角も小回りが利くように工夫。シートもスライド機構を持たせ、ユニバーサル化を実現しました。

ボディの製作では、実車のディティールを忠実に再現する部分と、ペダルカーらしさを出すためにデフォルメする部分のバランスを考え、デザインセンターの協力によってデータ化。各部品は、そのデータをもとに、試作のエキスパートメカニックが経験のない若手へ指導をしながら製作しました。このような工程を経て、遊具としての耐久性が十分があり、誰が乗っても、どこで乗っても楽しめるペダルカーが完成しました。

コスミダには、まだ続きがあった
最後にもう1つ紹介します。コスミダの製作過程で、デザインのバランス確認用として43分の1の光造形モデルをつくったところ、手ごろな大きさと愛くるしさが相まって、関係者の間で「欲しいアイテム」として人気になりました。

その名も「マゴスミダ」! いつかどこかで「スミダ」「コスミダ」「マゴスミダ」の3台が並んで展示できることを願っています。(文/いすゞ自動車 試作部 小川勇一・山下裕也)

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