モリサワ文字文化フォーラム「文字とデザイン 6」
人気ユニットが語る文字のあり方、ユニットのあり方

大日本タイポ組合の秀親氏(左)と塚田哲也氏。

書体メーカーのモリサワが開催している「モリサワ文字文化フォーラム」。第16回の「文字とデザイン 6」(2016年1月22日(金)、大阪・モリサワ本社。同東京本社にも同時中継)では、長友啓典氏と黒田征太郎氏の「K2」、秀親氏と塚田哲也氏の「大日本タイポ組合」、司会に鈴木信輔氏と樋口寛人氏の「デザイン団トンネル」という3つのユニットが顔を合わせた。表現への情熱と考え方を軽妙なトークで語り、満員の会場をたびたび沸かせた。

文字のダジャレをガッツリとーー大日本タイポ組合

SESSION.01には大日本タイポ組合の秀親氏と塚田哲也氏が登場。2015年にギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で開催された「字字字」展の展示作品をはじめとする彼らの代表作を見ながら、その飛び抜けた発想や苦心談、文字の不思議さ・面白さを語るセッションとなった。

大日本タイポ組合の作品は、文字を、読みや意味、あるいは別の文字などと組み合わせてつくり上げる独特なものだ。例えば、「字字字」展には、三つ子の子ども達が「宀」(ウ冠)の帽子をかぶった写真が展示された。「宀」に「子」の3つの組み合わせでリアルな「字字字」となるわけだ。あるいは、漢字を使って強引に(豪腕で?)欧文アルファベットをつくり上げた作品。パッと見て吹き出したり、じっと見ているうちにやっていることがわかって笑ってしまったりするのが、彼らの作品の真骨頂だ。遊び心がある、というより、ガッツリ、文字で遊んでいるのである。

大日本タイプ組合の作品。欧文アルファベットだが、よく見ると……。

塚田 「僕らは、無理矢理やることによる形の面白さを探っているんです」。
秀親 「意味のない変形には何も感じないけど、理由のある変形は面白い。1つの形の中に意味のとれるものが2つ以上あることを僕らは探っていて、こうも取れる、こうも取れるというダジャレ的なものをつくっています。人はじーっと見て、謎解きみたいに意味を見つけていくわけです」。
塚田 「だから、(展覧会場では)『ウォーリーを探せ』みたいなことになっている人もいる(笑)」。

文字には形と音と意味がある。その3つを組み合わせて、大日本タイポ組合は「文字のダジャレ」というデザインの原野を切り拓いた。どうやら、彼らの原野開拓はこれからもまだまだ続きそうだ。

K2の長友啓典氏(左)と黒田征太郎氏。

以心伝心の信頼感ーーK2

SESSION.02にはK2の長友啓典氏と黒田征太郎氏が登場。桑沢デザイン研究所から日本デザインセンターに入社した長友氏に対して、黒田氏は絵をほとんど独学した。そんなふたりの大阪での出会いから、K2の結成、現在に至るまでの話を聞くと、このユニットがなみなみならぬ信頼関係で成り立っていることが理解できた。

ふたりの共同作品は、黒田氏が絵を描き、長友氏がアートディレクションを担当することがほとんどだ。あるとき、長友氏が演劇のポスターを頼まれ、「こんな話あるで」と黒田氏に話した。黒田氏が直感で絵を描いた。その瞬間に、イラストレーター黒田征太郎、アートディレクター長友啓典という役割が決定したという。

長友 「朝昼晩、同じ飯を食って話していると、思うことが似てくる。言葉にならないけど、感じ方が同じになる。『こんな仕事が来てる。こんなことやろうか』というだけで、黒田から絵が出てくるんです。『おお、これ、おれが思ってた絵やなあ』という感じでね。それが60年近く続いているんです」。
黒田 「絵を描くとき、長友が(デザインとして)何とかしてくれるだろうという安心感があるんですよ」。

ふたりには今の若手のデザインに危惧の念がある。「身体を使う」大切さが忘れられがちなことだ。例えば、黒田氏が文字をすべて手書きで書いたポスターがある。

黒田 「僕は文字も絵だと思っているんです。ポストカードを書くときも、宛名まで自分で書かないと気がすまない。(宛名も)絵だと思うから」。
長友 「色も同じですね。目と手を使って色をつくる修行をすればするほど、体に刷り込まれてくる。そうすると、朝日と夕日の色の違いとかもわかるようになるんです。今の若い人はパソコンがあって、可哀想だと思う。ぽん、と選んだだけで色が出るけど、それで本当に理解できているのかな。自分自身の表現の幅が狭まってしまってるんじゃないかな、とちょっと心配」。

司会のデザイン団トンネル。樋口寛人氏(左)と鈴木信輔氏。

子供たちへの刷り込みが大事

SESSION.03は、K2、大日本タイポ組合、そしてデザイン団トンネルの3ユニットによるフリートーク。
長友 「大日本タイポ組合は面白がっているのが伝わってくるからいいね。ここから面白いものが出てくると思った」。
黒田 「大日本タイポ組合に、僕も入りたい(笑)。一緒にライブで何かやりたいね。コンピュータがあって、人もいる。画面に出てきた文字に僕が描いていくとかでもいい」。

文字、あるいは広くデザインや表現の分野で、未来はどうなっていくべきか。何をこれからの世代に伝えていくべきか。
黒田 「今、われわれは岐路に立っていると思います。人間が追求してきた文字が(パソコンなどの普及で)爛熟期に入ってきた。心の部分がそこにオーバーラップしていけるかが問題だと思う」。
長友 「僕は大阪の阿倍野の小学校に終戦の年に入学したんだけど、そこでは歌舞伎や文楽と一緒に漫才を見せていたんです。そこでわれわれは笑いを刷り込まれた。学校でも笑いをとる人間が尊敬されるようになった。大阪は笑いや、と言われるけど、あれは実は終戦直後の吉本の百年戦略の結果と思ってるんです。同じように、今の子供たちにも、大日本タイポ組合がやっているようなことを見せて『面白い!』と感じさせるような刷り込みをやらないといけないんじゃないかな」。
秀親 「この間、小学校6年生を相手にワークショップをやったんです。もうすぐ卒業だから自分の夢を習字で書いてもらい、その文字をつないで文にした。そうすると、みんなの夢からできた文字で文章をつくったことになるんです。だから、子供たちへの刷り込みは、僕らも着々とやってますよ(笑)」。
黒田 「いいねえ。やっぱり組合員になる!」。
塚田 「真面目なことは他の人にお願いして、僕らは僕らがやるべきことをやらなければいけないですよね。僕らはこれ(自分たちの仕事)が未来に向けてやるべきことだと考えてます」。

ユニットそれぞれ仕事の内容は違っても、自分たちのやるべき仕事をまっすぐに、しかも面白がりながら行っている。ユニットならではの相手への信頼感と、ユニットだからこそ生まれるアイデアの飛躍が感じられるフォーラムだった。(文/稲本喜則)