ゲームはリアリティからリアルへ 日本科学未来館 企画展
「GAME ON ~ゲームってなんでおもしろい?~」

日本科学未来館で企画展「GAME ON ~ゲームってなんでおもしろい?~」が開催中だ。70年代、80年代に流行したアーケードゲームから、その後普及した家庭用ゲーム機やポータブルゲーム機、スマホのゲームアプリ、VR技術を使った最新のものまで、ビデオゲームの進化を一望する内容だ。


展示ゲームタイトル133点がプレイ可能

企画担当者である内田まほろ氏(日本科学未来館)は次のように主旨を説明する。「ゲームは進化するテクノロジーと、人間の勝負心や向上心、楽しみたいという欲望が入れ子になって、ここ50年くらいのあいだに成長してきたメディアであり、カルチャー。さまざまなテクノロジーが進化している今、歴史的なことを学びつつ改めて『ゲームとは何か』ということを考える機会にしたい」。

「GAME ON」展は、2002年に英国のバービカン・センターで開催されて以来、世界24カ所を巡回してきた。日本初上陸となる本展の特徴は、国内のゲームメーカーや日本ゲーム博物館などのコレクションを中心にしたアーケードゲームエリアの展示が充実していること。さらに、エンジニアやコレクターの協力により展示ゲームタイトル135点のうち133点を実際にプレイできるということだ。巨大なゲームセンターが再現されたような会場で、世代を問わず時間を忘れて楽しめるだろう。

▲ 1971年に誕生した世界初の商業用アーケードゲーム「コンピュータースペース」。

▲ 1972年にアタリ社が制作したテニスゲーム「ポン」。新たに再現されたコントローラーでプレイすることができる。シンプルなルールと操作だが、勝ち負けが決まる瞬間の高揚感はどのゲームでも共通だ。

▲ 小型ゲーム機の数々。プラスチック素材の自由度を生かした凝った造形が印象的。筐体のデザインはゲーム体験をより豊かにする重要な要素だった。

▲ ゲームカルチャーを一挙に拡大した家庭用ゲーム機。初期のコンソールはメーカーによってさまざまだったが、総じてシンプルな箱型へと変化してゆき、ゲーム機は家庭の風景のなかへと浸透していった。


ゲームの現在

会場終盤のエリアでは、最新のゲームの状況を体験することができる(以下はすべて来場当日の整理券制)。

現在、小学生を中心とする子どもたちに圧倒的な人気の「マインクラフト」(2011年発売)は、1辺1メートルのキューブを積んで建築などをつくる、いわばビデオゲーム版ブロック遊び。PCやスマホ版など含めると世界中に1億人のユーザーがいるとも言われる。人気の理由はとにかく自由さだ。ブロックの世界で建物をつくったり探検でき、まるで自分の遊び場のような空間をユーザーは思い思いに楽しむことができる。明確なゴールやストーリーがないこともゲームのジャンルとしては新しい。パソコン版ではユーザーがプログラムに手を加えられるなどオープン化が進んでいるソフトだ。学校でプログラミング教材として使われるケースもあるという。

▲ 本展特別仕様の「マインクラフト」では、実際の設計図を元に再現した日本科学未来館のなかを体験・探索することができる。©2016 Mojang AB and Mojang Synergies AB. MINECRAFT is a trademark or registered trademark of Mojang Synergies AB


プレイステーションPlayStation VR(2016年10月発売)の先行体験コーナーでは、専用のヘッドセットを装着して最新のVR技術を駆使したゲームを体験できる。筆者は海中をテーマにした「The Deep(仮)」を体験したが、360度どこに顔を向けても海が広がり、魚の群や突然襲ってくるサメの動きも、驚くべきリアリティだった。こうした技術は、操作という概念からユーザーを解放し、誰でもバーチャルな世界を体験できるシステムとして多様な分野での可能性が考えられるだろう。

▲ プレイステーションPlayStation VRのヘッドセット。

▲「The Deep(仮)」では、PS VRで誰でも簡単に深海ダイビング体験ができる。©Sony Computer Entertainment Europe


今年でシリーズ18周年を迎えた「グランツーリスモ6」(2013年)も体験できる。シリーズ累計出荷数7,500万本以上を誇る同作の歴史は、自動車やコースのリアリティをストイックに追求してきた歴史ともいえる。自動車のエンジニアやつくり手が「グランツーリスモ(以下、「GT」)」のためだけに夢のクルマを開発する「ビジョン グランツーリスモ」の取り組みなどは、開発会社であるポリフォニー・デジタルが15年以上かけて自動車メーカーと築き上げてきた関係性があるからこそ可能なプロジェクトだ。

▲ 本展の会場では2013年発売の「グランツーリスモ6」を体験できる。

▲ © 2013 Sony Computer Entertainment Inc. Manufacturers, cars, names, brands and associated imagery feature in this game in some cases include trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners. All rights reserved. Any depiction or recreation of real world locations, entities, businesses, or organizations is not intended to be or imply any sponsorship or endorsement of this game by such party or parties.


“リアルドライビングシュミレーター”という名のとおり「GT」のプレイヤーがプロのレーシングドライバーとして活躍するケースも増えている。先日発表された最新の「グランツーリスモSPORT」では、国際自動車連盟(FIA)と組み、FIA公式のオンラインチャンピオンシップを開催する。セレモニーでは「GT」の優勝者がF1のチャンピオンドライバーと並んで表彰される可能性もあるという。

これまではリアルの世界をゲームに取り込んできたが、これからはゲームがリアルの世界に還元されるステージになるのではないか。リアリティからリアルへ。もしかしたらそれは、ゲーム全般の未来に言えることなのかもしれない。(文・写真/今村玲子)


企画展「GAME ON ~ゲームってなんでおもしろい?~」

会 期 2016年3月2日(水)~5月30日(月)

会 場 日本科学未来館[東京・お台場] 1階 企画展示ゾーン

詳 細 http://www.miraikan.jst.go.jp/spexhibition/gameon/



今村玲子/アート・デザインライター。出版社勤務を経て、2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在『AXIS』などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。