vol.80 拡張する積み木遊び

今回は、2016年11月8日(火)〜27日(日)まで東京・西池袋の自由学園明日館 JMショップで開催されている「Pebbles しましまの小石たち展」facebook>を訪れる機会があったので、そこで見た古くて新しい遊びの形について記しておこうと思う。

「Pebbles」は、自由学園生活 工芸研究所 織物製品部が約80年前からつくり続けてきた「プラネテ」(フランス語で「盛夏」の意)という先染め織のカラフルな綿布を使った布製のオブジェで、生物をテーマとするバッグやテキスタイルなどを手がける鎌倉のデザインレーベル「seto(セト)」によってつくり出された。

プラネテについては、浦川愛亜さんの本コラム「日本発のデザイン“プラネテ”のつくり手」<http://www.axismag.jp/jp/2016/08/03/>に詳しいので、ぜひ一読されたい。

この生命感溢れる布素材を、鎌倉の浜辺で見つけた5つの小石をモチーフにしたフォルムと組み合わせたPebblesには、1つとして同じものがない。また、使い方も固定化されておらず、使い手の創造性に委ねられている。例えば、窓辺に並べてインテリアの一部にしてもよいし、何か小物を置くためのクッションとして利用してもよいのだ。

ただ、デザイナーの瀬戸ご夫妻は、川の小石を集めて巣をつくるニンギョウトビゲラという昆虫の営みにヒントを得てPebblesを発想したことから、展示にあたっては来場者に好きな色と形のものをいくつか積み上げてみることを勧めている。いわば、布製の積み木である。

筆者も試してみたが、わずか5つばかりを積み上げるだけでもなかなか難しく、それだけに大人でも無心に楽しめる。また、実際に手にしてみると、あるものは振ると鈴の音がしたり、別のものは押すと優しいクラクションの音が鳴るというふうに、聴覚に訴える工夫もなされている。

そうしてでき上がるのは、不安定に見えてバランスのとれたカタチであり、何度でも崩してまた積み上げたくなる、何か根源的な魅力を感じる。会場では、好きな色と形のものを5つ選び、専用バッグに入れて購入できるようになっていたので筆者も買い求めたのだが、どれを選ぶかは、かなり悩ましい問題だった。

自由学園には、もう1つ、1931年からつくられているコルク製の積木があり、こちらは軽さや触感の良さに加え、表面の適度な摩擦によって積みやすく崩れにくいことが特徴となっている。

瀬戸さんは、ご自身も子ども時代から愛用してきたコルク積木の丈夫さと遊びやすさに着目し、これを大型化した「コルクブロック 20. 30. 45」もデザインした。数字は、各辺の寸法を示しており、立てる方向によって、荷重100kgまで耐えるスツールやテーブル、作業台などになるほか、複数を組み合わせて、より大きなサイズの造形物をつくることも可能だ。

同じ積木遊びでも、素材や形を自由な精神で見つめ直せば、まだまださまざまな方向性が考えられることを教えてくれた展示会であった。