日本旗艦店から見えてくるカルテルの販売戦略

カルテルの旗艦店が10月に名古屋と東京にオープンしたが、この背景には従来日本の複数の代理店と取り引きしてきた慣習を一社統括に改めるという判断があった。それは、代理販売という体制から、欧米で浸透しているパートナーの関係への移行とも言える。イタリアから来日したカルテルのクラウディオ・ルーティ社長に日本での販売戦略について聞いた。

インタビュー・文/長谷川香苗

▲ 地上2階、地下1階からなる東京・南青山の旗艦店には家具から照明器具、ホームアクセサリー製品まで約400アイテムが揃う。Photos by Nacása&Partners


複数の代理店を通した販売から、トーヨーキッチンスタイル1社による独占輸入販売に移行したいきさつについてお聞かせください。

日本の家具市場におけるカルテルの立ち位置を、欧米諸国と同じくらいに引き上げたいと考えました。日本における販売網は、専門店であるオンリーショップのほか、ショップインショップ、セレクトショップなどさまざまです。これらは複数の代理店から輸入し、在庫がなくなれば注文するという、ある意味、受け身の販売計画です。

今回、トーヨーキッチンスタイルと日本での独占輸入販売契約を結びました。引き続き、10社ほどの販売代理店を通して全国に流通させますが、その代理店選びも総代理店が担います。パイプを1つに絞ることで販売戦略を集約し、一貫したブランドメッセージを打ち出すことができます。

▲ ショップのデザインは世界各国の旗艦店をデザインしたフェルッチオ・ラヴィアーニが担当することで世界観を統一。コンクリートの壁、木材などの天然素材を用いた床といった空間が、プラスチックの商品を際立たせている。Photo by Nacása&Partners


販売代理店のことをパートナーと呼ばれるそうですね。

もともと“パートナー”と呼んでいます。彼らには製品を理解し、自発的に販売したいという思いで関わってもらいたい。単に売り場を提供するだけでは製品を売ることは難しい時代です。今後はパートナーとしての意識をより高めてもらい、同時に私たちは時間をかけてパートナーとの人間関係を築いていきたいと考えています。


SNSなどで情報が一歩きして、知らぬ間に拡散されている場合があります。ブランドとしてのメッセージを人々に伝えることも重要ではないでしょうか。

元来、日本はよいものを正当に評価する市場だと思います。私はかつてイタリアのファッションブランドを日本に進出させる仕事をしていました。そのときの経験から、きちんと伝えれば日本のみなさんは理解してくれると思っています。

米国では現地法人の設立によって、ブランドメッセージを行き渡らせることができました。一方、日本市場におけるブランディングがこれまで手薄になっていたことは否ません。その反省から、強いネットワーク力を持つトーヨーキッチンスタイルにパートナーになってもらったのです。なにより渡辺孝雄社長が、40年近く私たちの活動を見続けてくれているのですから。

▲「ジェリーズコートハンガー」の微妙な中間色はプラスチック技術に長けた同社ならでは。デザインはパトリシア・ウルキオラ。