待望の再開!
子どもたちに大人気の「ネットの森」が再登場。

▲7月20日(木)より再開された「ネットの森」(彫刻の森美術館)

彫刻の森美術館の「ネットの森」が、7月20日に新しくなって登場した。2年近くに渡るクローズ期間を経ての再開に、夏休みの子どもたちが各地から多く訪れるだろう。

再登場の初日には早速子どもたちが訪れ、ネット作品の中に入って登ったり、跳ねたり、ポール部分に乗ってみたりしながら、色彩感覚と造形感覚をからだ全体で感じながら思う存分に遊ぶ姿が見られた。クローズ中に来館した子どもたちのなかには、今は遊べないことを知って泣いてしまう子もいたと聞く。それくらいこのネット作品は子どもたちの憧れだ。


大断面集成材を積み上げた木造ドームの中にカラフルな手編みのネットがいくつもつなぎ合わされ、巨大なハンモックの造形が組みこまれた「ネットの森」は、造形作家・堀内紀子と建築家・手塚貴晴+手塚由比によるコラボレーションから2009年に登場。今回の再開に際して、現在拠点をカナダに構えている堀内さんが来日し、数名の制作メンバーとともに長時間に及ぶ制作を短期集中型で行った。

        ▲巨大な作品を前に、姿勢を巧みに変えながら制作を行う堀内紀子さん。

ネット作品にはナイロン66という衝撃の吸収に優れた、大変耐久性のある繊維が使用されている。ただ日々子どもたちが遊ぶものなので、定期的なメンテナンスは不可欠だ。

堀内さんによる国内のネット作品は彫刻の森美術館のほか立川昭和記念公園などが挙げられるが、ローマをはじめとした海外でも多くの作品を制作している。

メンテナンスが必要な体験型のアート作品、という概念がなく周りに理解を得られなかった頃から堀内さんは「日本人は伝統的にものを手入れしながら長持ちさせるのに、作品がなぜそのようなあり方ではいけないのか」と周りを説得し、この画期的なネット作品を子どもの遊びの場として解放してきた。

現在も制作とメンテナンスのために各国を飛び回る生活を送っている。

▲メンバーとともにリズムよく黙々と制作していく様子。

他の子どもたちと居合わせる環境で思い切り遊ぶ経験をした子どもたちには、楽しかった記憶やその経験から養われたイマジネーションが大人になってもしっかり残っている、と堀内さんは言う。

のびのびと遊ぶ場所がますます少なくなっている現代、堀内さんのネット作品は子どもたちにとって胸が弾けるほど楽しい体験に違いない。

残念ながら彫刻の森美術館のネット作品の中に入れるのは小学生以下の子どもたちのみだけれど、作品に魅せられた大人の皆さんにはぜひ観てほしい映画がある。

© Compass Films Production 2016

堀内さんをはじめ、糸を使って世界で活躍するアーティストの作品や人生に迫ったドキュメンタリー「YARN 人生を彩る糸」が11月より渋谷イメージフォーラムほか全国で公開されるのだ。編み物を手芸から「人とつながる」アートに昇華させる作家たちをアイスランドの女性監督がオリジナルのアニメーションを混じえながら描いた意欲作だ。

クラフト・ブームが叫ばれるなか、受け継がれてきた編み物の歴史や作家ひとりひとりのストーリー、作品の無限の可能性について鮮やかに語られている映画は前例にないだろう。堀内さんのより詳しいインタビューは映画の紹介も合わせてWebマガジン「AXIS」内で掲載されるので合わせて読んでいただきたい。

再登場したばかりのネットの森と映画「YARN 人生を彩る糸」、どちらも目が離せない。

堀内紀子(ほりうち・としこ)
東京都生まれ。1964 年に多摩美術大学テキスタイル科卒業後 渡米。クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン 州)で染色を学ぶ。1968 年、ニューヨーク近代美術館で開催 されたウォール・ハンギング展に出品。1977年の「第3回彫 刻の森美術館大賞展」に≪樹林の内包する空気≫を出品。「布 の特色が最大限に生かされる創造物とは、単に造形や色が目を 喜ばせるのではなく、身体全体を素材にゆだねることによって 楽しむことができる作品」として、数々のプレイ・スカルプチャーを制作。現在、カナダ在住。

「YARN 人生を彩る糸」
2017年11月、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
監督:ウナ・ローレンツェン(長編デビュー作/アニメーター)
出演:オレク (かぎ針編みアーティスト)、サーカス・シルクール (コンテンポラリーサーカス)、ティナ(ヤ ーン・グラフィティ・アーティスト)、堀内紀子(テキスタイル・アーティスト)
ナレーション:バーバラ・キングソルヴァー(米ベストセラー作家) 「始まるところ」より
上映時間:2016年/アイスランド・ポーランド/76分 SXSW2016 正式出品
後援:駐日アイスランド大使館
提供・配給:ミッドシップ+ kinologue © Compass Films Production 2016
公式HPhttp://www.yarn-movie.com

彫刻の森美術館

開館時間
9:00〜17:00 年中無休 *入館は閉館の30分前まで
所在地
〒250-0493 神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平1121
公式HP
http://www.hakone-oam.or.jp