グラフィックデザイナー おおうちおさむさん
「グラフィックデザインの視点から光をとらえる」

▲2014年開催の写真家リリアン・バスマンの展覧会より。

グラフィックデザイナー、おおうちおさむさんはグラフィックの視点で空間を捉え、照明のディレクションまでを手がけています。展覧会の図録製作から会場構成におよぶアートディレクション、そして光の重要性について聞きしました。

▲リリアン・バスマンの展覧会より。壁の二面がブラック&ホワイト。白い面は壁全体に光を当て、黒い面は写真作品のみに光をフォーカスしている。

2013年からシャネル・ネクサス・ホールで開催されている展覧会のアートディレクションを数多く手がけている、おおうちさんは、「空間把握ができないとグラフィックデザインはできない」と言います。当初は施工会社が会場デザインを請け負っていたものの、次第に自ら会場構成や展示に対する照明のディレクションまでするようになったそうです。その根底には、「専門じゃない強み」あるとのこと。

▲おおうちおさむさん。田中一光デザイン室時代を経て2002年に独立。ナノナノグラフィックス代表取締役社長。

一貫しているのは、ディレクションの軸を1本にし、提案したいことの最大を掲げて、それを可能にする方向に持っていくというスタイル。特に、シャネル ・ネクサス・ホールでの展覧会の会場構成には「凝りすぎないようにしつつも、劇場的な部分が必要」という考え。

▲2018年 1月開催のフランク・ホーヴァットの展覧会。照明演出の具体的なディレクションは舞台照明のデザインを多く手がける、バランス代表の関口裕二氏と一緒に行っている。

▲フランク・ホーヴァット展のための模型。おおうちさん自ら制作した。

照明については、空間に既にある設備に対しても施工し直す覚悟で臨んでいるそう。展覧会は毎回違うコンセプトなので作品の特徴を引き出すためにも必要なプロセスなのだと。「作品をただ直線的にレイアウトするのではなく、影を特に意識して空間構成を考えます。見る人が自ら見方を編集できる展覧会にしたい」と話します。壁に仕切られた一見迷路のように見える会場構成のでは、入り口からの作品への光と、戻ってくるときに見る作品への光とでは、角度も色温度(光の色味)も変えています。

▲2017年 京都国際写真祭でのロバート・メープルソープ写真展。誉田屋源兵衛 竹院の間を会場にした展覧会では、室内にある照明も活かした。

シャネル・ネクサス・ホールでの展覧会は京都国際写真祭に参加しており、「会場が変わっても作品の良さが伝わるようにその状況に合った会場構成を考えています」とおおうちさん。京都の古い建物が会場の場合、その建物の良さを残しつつ、自然光とのバランスを重要視しているのだと。空間ありきでデザインしているという、図録のデザイン。そこから照明へのリクエストが、いつも湧き上がってきているそうです。この4月14日からの京都国際写真祭では、1月に開催したフランク・ホーヴァット展が参加。そして、同じく4月4日にシャネル・ネクサス・ホールではサラムーン写真展がスタートします。おおうちさんのアートディレクションによる両展覧会、照明ディレクションも見所です。

取材協力:有限会社ナノナノグラフィックスシャネル・ネクサス・ホール