グラフィックデザイナー 助川 誠さん
「形や美しさだけではない、フォントの選び方」

企業や店舗のブランディングやVIから、サイン計画、パッケージ、キャラクターデザインまで幅広く手がけるグラフィックデザイナーの助川 誠さん(SKG)。パッケージならば「表」の部分だけでなく、「裏」の表示までデザイナーがしっかり手をかけるべきだ、と言います。制約の多い場所にAXISフォントを使う理由や、フォントを選ぶ際にも「見た目だけでは選ばない」というユニークなこだわりについて聞きました。

――京阪神で展開するエイチツーオーリテイリング食品事業のスーパーマーケット「阪急OASIS」ののPB(プライベートブランド)商品「阪急の味」のパッケージデザインを手がけています。

2016年にPB商品がリニューアルされました。リニューアルにあたってさまざまな議論をしながら、「これから阪急OASISはどんなスーパーマーケットを目指すのか」という指針となるテキストがつくられたんです。そのなかに「お客様、生産者、従業員が一体となる」「ライブ感あふれる市場(いちば)」「海、大地、地域が食卓でひとつにつながる」、といったキーワードに着目して、それを円ですことを考えました。よくプレゼン資料でも見かける「3つで一体となる」という表現なんですが、そのままパッケージに取り入れました。

▲輪をトリミングし、店に陳列したときにパターンがつながる。商品を通じて隣のお客さんにもつながるイメージだ。(プロデュース/Kraan inc.)

▲キービジュアルは同じルールだが、フォントは食品に合わせて変えている。

▲モノクロのパッケージは上位ランク「阪急の味 プライムタイム」の商品群。マットニスを使い、パッケージの質感も上質なイメージに。

文字を詰め込むところにAXISフォントを活用

――裏面の成分表示や説明の部分にAXISフォントを使っています。

裏面の表示は、和文はすべてAXISフォントです。欧文はDINです。「g(グラム)」については、業界の慣例で「メガネ・ジー」と呼ばれるメガネ形の「g」を使うことになっているため、その部分のみ新ゴに置き換えています。基本的に成分表示は「8ポイント以上で表記」という決まりがあるため、それを守りつつも限られたスペースにできるだけ文字を詰め込まなければなりません。AXISフォントは文字を詰め込んでも野暮ったくならず、すっきりときれいに見えるので採用しました。

――食品のパッケージデザインの場合、外部のデザイナーは通常、表(おもて)面のみ手がけ、裏の表示部分は印刷会社がやることが多いそうですね。

文字校正の修正頻度が高いことが理由の一つにあると思います。ただ僕は、最初から「裏の表示部分を含めてやりたい」と伝えていました。食品のパッケージって、例えば賞味期限を押印するための枠の大きさや位置を機械の設定に合わせなければならないなど、制約の多い世界なんです。そのなかでパッケージ全体のきれいさ(見栄え)を保つには、同じデザイナーが裏まできちんと手をかけることが大事だと思っています。

――別の案件では、日本機械学会の会報誌のデザインでもAXISフォントを使っています。

2017年1月に、120年続く学会の会報誌をリニューアルし、レイアウトも新しくして1年ほど運用してきました。ただ、寄稿者による論文の最後に添える参考文献のリストがひじょうに長いことが悩みで、なかには肝心の論文を圧迫してしまうケースも度々あったんです。

▲日本機械学会の会報誌。表紙には同学会が主催している子どもの絵画コンクールの応募作品を採用している。

2年目にリストの存在感を薄める方向にしました。以前は游ゴシックを使っていたのですが、AXISフォントのコンデンスとコンプレス(超長体)に変えて、ウェイトもウルトラライトにすることで軽い印象にしています。文字量も詰め込めるようになり、論文のスペースがきちんと確保できるようになりました。

▲論文の最後につける参考文献リストの部分。AXISフォントのコンデンス、コンプレスのウルトラライトを使用。

フォントは、その成り立ちやコンセプトでも選ぶ

――助川さんは、仕事でフォントを選ぶ際にはどんなことに気をつけていますか。

僕はあまりフォントの見た目だけでは判断しません。例えば、4月11日にオープンした「神保町ブックセンター with Iwanami Books」のプロジェクトで、ロゴやサイン計画を担当しました。岩波書店の有名なマークであるミレーの「種撒く人」から連想して「本読む人」というキャラクターをつくったのです。このキャラクターの下に添えてある欧文を、「ブックマン」をベースにしています。本読む人だけに(笑)。もちろんほかのフォントも検討はしたのですがしっくりきませんでしたね。

▲「神保町ブックセンター with Iwanami Books」のロゴマーク

インバウンド事業向けシェアオフィス「INBOUND LEAGUE」のロゴは、「アバンギャルド」という書体をベースにしています。アバンギャルドは特徴的な合字が用意されているのが特長のひとつです。合字を「ふたつが隣り合うことによって新しい可能性が生まれる」という考えに置き換えて、これはまさにシェアオフィスの考えにぴったりだと思い、採用しました。このように、フォントそのものの形や美しさといった主観的な観点だけでなく、フォントの成り立ちや背景に着想することが多いですね。

▲「INBOUND LEAGUE」のロゴマーク

――これから春にたくさんのプロジェクトがオープンを迎えたそうですが、いくつかご紹介ください。

2018年3月29日にJR亀有駅の改札横に「すしべん」というお弁当屋さんがオープンしました。福井に焼き鯖すしの生みの親である若廣という会社があり、その東京支社が亀有にあるという縁で路面店として初めて出店することになりました。「寿司弁当の新基準」というコンセプトを提案し、ブランディングデザインを担当しています。ロゴマークはひらがなの「す」と「し」、漢字の「弁」を組み合わせて、お箸をあしらっています。

▲「すしべん」のロゴマーク

それから4月1日には大阪・梅田のルクア大阪という商業施設に、「キッチン&マーケット」という阪急オアシスの新業態であるグローラサント(食料品店の店内や店舗敷地内で食事を提供する業態)の店がオープンしました。これは「&(アンド)」というくらいだから、間(あいだ)というコンセプトが大切なのかなと思い、「ビトウィーン」という書体をベースにしました。この話はプレゼンしていませんが(笑)。

▲「キッチン&マーケット」のロゴマーク。(プロデュース/Kraan inc.)

――助川さんの仕事には思わずクスっとなるようなシャレが効いているような気がします。大切にしていることはありますか。

制作でのコンセプトはそれぞれですが、すべてのプロジェクトにおいて、「デザインで、本当の助けに」なることを心がけています。助川だけに「助」にフォーカスしつつ(笑)。

――ありがとうございました。End

助川 誠(すけがわ まこと)/ブランディングデザイナー。1979年神奈川県生まれ、三浦・横須賀・京都育ち。京都工芸繊維大学大学院在学中、VJ SYNCSとして京都クラブメトロやSecond Royal Recordsを中心に全国を回る。大学院修了後、グラフ株式会社入社。北川一成に師事。Design x Printing = GRAPH をモットーに、日々印刷術を駆使したデザインをベースに多くのブランディングに携わる。2010年、芸人・夙川アトムと共に手掛ける「ちゃいちーのろーたーくん」が話題に。2013年にGRAPHを卒業し、SKG株式会社を設立。
http://s-k-g.me

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