パリ「メゾン・エ・オブジェ」が大きく変化!
2018年9月展の見どころを紹介します

9月に入るとバカンスシーズンの終わりを告げるように、欧州各都市でさまざまな見本市やデザインウィークが始まります。9月7日(月)に開幕するデザインとライフスタイル分野の見本市「メゾン・エ・オブジェ・パリ」もそのひとつ。例年、1月と9月の年2回開かれますが、この9月展からブース構成などが大きく変化するとのこと。その内容を「インスピレーション・テーマ」や「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」とともにご紹介していきます。

来場者のために、原点に立ち返ったホール構成

この再編成に向けて、メゾン・エ・オブジェはふたりの専門家を外部から招いたと言います。ひとりはデザインコンサルタントのアン・ヌーベル・エア社(Un Nouvel Air)を率いるフランソワ・デルクロー。もうひとりは、メルシー(Merci)の設立者であるジャン・リュック・コロナ・ディストリア。ライフスタイルの変化をいち早く捉える彼らが重視したのは、空間デザイナーとリテーラーに大別される目的の異なる来場者が、いかに効率的に目当ての出展者と出会うことができるか。巨大な見本市が抱える共通の課題に、1年半かけて取り組み、ひとつの回答として示します。

新しいアイデアに出会うための「メゾン」ゾーン

では、具体的にどのようなホール構成になっているのでしょう? インテリアデザイナーや建築家に向けた「メゾン」ゾーンは、「ユニーク&エクレクティック」「トゥデイ」「フォーエバー」「クラフト」の4つのスタイルに分類して構成。来場者が新製品を見つけるだけでなく、そのスタイルごとに新しいアイデアやインスピレーションを獲得できるような、デルクローが「魅力的な空間を演出することが必須」と語る出展者が揃います。

また、それぞれに設けられた「シグネチャー」スペースでは、個性的で優れた感性を持つブランドがフィーチャーされ、これも必見のコーナーになりそうです。

7つのセクターを掲げた「オブジェ」ゾーン

バイヤーに向けた「オブジェ」ゾーンでは、よりわかりやすい7つの名称に変更。「クック&シェア」「スマートギフト」「ファッション・アクセサリー」「キッズ&ファミリー」「ホーム・アクセサリー」「ホーム・フレグランス」「ホーム・リネン」は、リテールを支援するためのセクターです。

すべてのゾーンには継続して、今季必見のプロダクトを一堂に集めた「What’s New」スペースを設置。注目のインテリアオブジェが回転寿司のような台に載って回っていたり、印象的な観覧車のようなオブジェがあったりと、記憶に残り発見をうながす仕掛けによって演出します。

インスピレーション・テーマ「Virtuous」への思い

新しい消費トレンドをつかむために、毎回刊行される「インスピレーション・ブック」を多くのバイヤーが購入していますが、9月展のインスピレーション・テーマは「Virtuous(ヴァーチュアス、徳性)」。聞きなれない言葉ですが、「徳義をわきまえた立派な品性。道徳的意識。道徳心」という意味です。

このテーマを選んだネリー・ロディ社のヴァンサン・グレゴワールは、「世の中がヒートアップしてしまっている混沌とした状態を今すぐにストップしなければならない」と告げ、「よりエシカルで道徳的な新しいルールや、成長や消費とは異なる方向性を持ったオルタナティブな解決策が必要」と説きます。

このコンセプトに基づき、グレゴワールは「インスピレーション・スペース」と「ブックカフェ」の空間デザインを担当。そこでは「生産」「環境」「ローカル」「ヒューマン」という4つの価値観を提示しながら、活気に満ち、出会いや発見、交流が行き交うような街や広場といった空間をつくり上げます。「インテリアの世界には、真にヴァーチュアスで魅力的なコンセプトを生み出す余地が残っていると思います」という彼の言葉は、多くの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

インスピレーション・スペースはこれまでのホール7から、ホール5Aに移動。誰もがアクセスしやすい「メゾン」ゾーンと「オブジェ」ゾーンの分岐点に設けられますので、ご注意ください。

注目のデザイナーは、ラミー・フィシュラー

メゾン・エ・オブジェは毎回、国際的なデザインとインテリアシーンにおいて傑出したクリエイターを選出し、「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」として展示ブースを設けたりトークを開催しています。

▲Ramy Fischler ©︎RF Studio

今回選ばれたのは、ベルギー出身でパリを拠点とするラミー・フィシュラー(RF Studio)。日本ではまだあまり知られていないデザイナーですが、常に映画から強いインスピレーションを受けていると言います。

そのプロジェクトは、イタリアのガストロノミーを代表するシェフ、マッシモ・ボットゥーラによって考案されたホームレスや難民のための慈善レストラン「ル・レフェットリオ・パリ」で建材をリサイクルして空間をつくり上げたり、「ツイッター・パリ」では、仕事に対する世界観の変化を研究してデザインに取り入れたり。メーカーのためではなく個人やレストランのために開発した家具が多いのも特徴です。

フィシュラーの展示は、単なる製品紹介とは異なる、自身のスタジオやプロジェクトの多様な日常を描き出すという、貴重なものになりそうです。

▲Refettorio Paris ©︎RF Studio

▲Twitter Paris ©︎RF Studio

これまでにない大きな改革に挑むメゾン・エ・オブジェ・パリ。新しい出会いや発見にあふれた見本市は、9月7日(金)から11日(火)に開かれます。End

メゾン・エ・オブジェ・パリ 2018年9月展

会期
2018年9月7日(金)〜11日(火)
時間
9:30〜19:00(最終日は18:00まで)
会場
パリ・ノール・ヴィルパント見本市会場
詳細
http://www.maison-objet.com/en
問い合わせ
メゾン・エ・オブジェ日本総代理店/株式会社デアイ
Tel: 03-3409-9495
E-mail: mo-japon@deai-co.com