なぜ、今、上海で? トゥクトゥクの逆襲に見る、昔に戻る柔軟さ

▲これがトゥクトゥク。合理的でかっこいいと思いませんか! 風雨に耐える傘、各種カバーリングで冬仕様です。Photos by Misa Nakata

みなさんこんにちは。パナソニックデザインの津田です。私も上海に赴任して早1年が経ちました。最初にブログを書いた赴任して間もない頃から、いろんな変化や見えてきたものがあります。ぜひそれらをお聞きいただければと思います。

今回はトゥクトゥクの逆襲というお話です。

先般の「タクシー争奪ゲーム」の話のなかでも、最近はタクシーが捕まらない、白タクを呼ぶこともあります、ということを書かせてもらいましたが、そのタクシー過当競争の狭間で台頭してきたのがトゥクトゥクです。中国語で「自動三輪車」ですが、わかりやすく今回はトゥクトゥクと呼びます。タイなどアジアの国ではたくさん走っているトゥクトゥクが、タクシー不足のビジネスチャンスを狙って今また上海で増えてきているのです。

では、タクシーが捕まらなくてトゥクトゥクチャレンジされる方のために、ノウハウを伝授いたします。

1)トゥクトゥクとはなんぞや?

バイクの後ろに簡易荷台が付いた乗り物、三輪バイク。運転者に加え、乗客がふたり乗れる仕様になっている。乗車スタイルにはさまざまなバージョンがある。例えば、

オープンルーフタイプ 椅子が付いているだけのシンプルなデザイン。屋根がないため、ひじょうに見晴らしが良く、頬に当たる風が爽快。ただし雨が降ると濡れるのがつらい。

簡易幌つきタイプ 風や雨に強い。運転席にも流線型の傘がついていたりして、雨天対応仕様であることが認められる。走行時の幌のバタつきでスピード感が高まる。

スチールフレームタイプ 金属のパイプで荷台が囲まれ、乗員の安全性を大幅に向上させた堅牢仕様。個人的にはこれがお勧め。フレームをつかんでジェットコースターのように乗ると安心度が増す。しかし寒い日は握ったフレームが肌に刺さるように冷たい。

▲スチールフレームタイプ。頑健なつくりで安心です。

後ろ向き乗車タイプ これこそ後ろ向きジェットコースターのようにアトラクション感覚に溢れる。後ろ向きに乗りつつ、カーテンを閉めるだけの簡易構造のため、もし急制動で転げ落ちたらどうしよう、という不安感が常につきまとい非日常感が満載。

▲オープンルーフでなおかつ後ろ向き乗車タイプ。まだ乗ったことはないですが、面白そう……。

フルカウル仕様 日本の大型スクーターのようなスタイリッシュなカウル仕様のものがごくたまに走っている。見つけるとレアキャラを見つけたかのような喜びがある。走行スピードが速いわけでは全くない、と言うかカウル付きへの期待の余りスピードの遅さが逆に際立つが、乗り手のこだわりが見た目からひしひし伝わってくるのが僕はとても好きです。

▲なかなか見かけないレアキャラ?のフルカウルタイプ。

2)トゥクトゥクの乗り方は?

「タクシーが全然捕まらない。どうしよう……」と道で往生していると、どこからともなく現れます。ですので呼ぶ必要はありません。「どこまで行く?」と聞いてくるので、タクシーと同じように行き先の交差点の道の名前を伝えます。

次は値段交渉。タクシーの半額以下で、時には言い値、端数切捨てでスパッと交渉するのがコツ。近くて10元、遠くて20元といった感じです。

▲車線も信号もお構いなしに爆走!エンジン音が豪快です。

3)乗り心地は?

おおよそ悪い、しかしそれが面白い!変速ギヤがないのか、「ブゥイイイイイイィイィィィィィーーーーーーィン」とただアクセルを開けて走るだけ。そんなに速くないのに、激しい爆音と振動が客室に響き渡ります。サスペンションも大体イッていて、路面の凹凸を拾いながら走るダイレクトな感覚はまるでレーシングカーのよう。それは走っているのを見ているのと乗ったのとでは大違い。ぜひこのライブ感を体験してもらいたいです。

世の中が一直線に先進化する、後戻りしない、のではなく、市場のニーズに合わせて柔軟に変化する、時には昔のモノやコトが見直される。そしてそこに豊かな体験と人間味がある。まさに温故知新であるのがこの中国の面白さです。End