アーティスト 池田亮司が新作「data-verse」を公開
鑑賞者を広大なデータの世界に引き込むオーディオビジュアル作品

日本を代表する電子音楽作曲家兼ビジュアルアーティスト、池田亮司。数学的な美と正確さに着目し、音と光に秘められた本質的な特性を追求してきた彼は、2000年からデータをテーマとしたオーディオビジュアル表現や美術表現を模索し続けている。

こうした取り組みの集大成が、オーディオビジュアル3部作の「data-verse(データヴァース)」だ。この3部作で池田は、大量の科学的データのセットに対して加工、転写、変換、変形、解体/再構成/メタ構成を実施し、統合を行っていく。

これにより、素粒子から宇宙に至るまで、この世界に存在している様々な「次元」が視覚化および音響化されることになる。「data-verse」では、ミクロから人間のレベルへ、さらにマクロへと向かう過程を3通りの方法で表現。鑑賞者は視覚と聴覚の両面で、広大なデータの世界へ、現代人の日常にあふれるデータの流れの中へと引き込まれる。

▲photo: Julien Gremaud, courtesy of Audemars Piguet
concept, composition: Ryoji Ikeda
computer graphics, programming: Norimichi Hirakawa, Tomonaga Tokuyama, Satoshi Hama, Ryo Shiraki

音響、視覚、素材、物理現象、数学的概念といった様々な要素を統合的に組み合わせることで、既成の概念を超越する池田。彼が人間の感覚とデジタル技術の限界に挑みながら探求するのは「極限」、そして「無限」の世界だ。

鑑賞する人の心を引き込むライブパフォーマンスやオーディオビジュアルインスタレーション、書籍やCDといった多様な形態のプロジェクトに長期にわたって取り組んできた。これらのプロジェクトは年月とともに進化し、データをテーマとして模索した最新の表現が加わった。

本インスタレーションは、2019年11月24日(日)までイタリアで開催される第58回 ヴェネチア・ビエンナーレにて公開されている。自身の言葉によって制限を加えることなく、鑑賞者の想像に委ねるという姿勢を貫く彼の作品を体験してみよう。End