3人のアーティスト×Honda自由運転
鈴木康広/アーティスト
「自由運転は便利なツールじゃなくて、発見のためのツール」

未来を見据えて、Hondaが自動運転を使って考えたのは、「自由運転」。

前田有紀(前々回)、福原志保(前回)と続けてお届けしてきた3人のアーティスト×Honda自由運転。3人目として、本田技術研究所の一室で自由運転のシミュレーターを体験したのは、アーティストの鈴木康広

見え方や感じ方が変われば、世界は思いがけないところに広がっていく。世の中に当たり前に存在するもの、日常でつい見逃してしまいそうなものに新たな視点からアプローチし、自由な発想から、驚きや気づきを促す作品を発表してきた鈴木。彼が感じた、自由運転の可能性とは?

▲3人のアーティスト×Honda自由運転—Sensitivity of 3 artists|鈴木康広さんの場合
映像:山田修平(HANABI.inc)

――自己紹介をお願いします。

鈴木康広です。

さまざまな作品を作っていますが、まったく新しいものを作り出すというよりも、みんなが知っているもの、慣れきっているもの、当たり前になっているものの見方が変わる瞬間を作っています。思わず修正して、ないことにしてしまっているような意識のすきまから、新鮮な感覚を引き出したいと考えています。

例えば、けん玉というのは赤い色をした球が付いていますが、「人は、けん玉をしながら、じつはそこにりんごも見ているんじゃないか」という考えを具現化することで、地球の引力が見えてくるんじゃないか、とか。

ニュートンによって万有引力が発見されたことで、世界は一度科学的に捉え直されました。1つのきっかけで物事の見方ががらりと変わる。そんな瞬間を人類は経験してきましたが、それは現代でも起こりえるんじゃないかと考えていて。それがアートなのかデザインなのか、自分の中でまだはっきりとした枠組みはなく、日常の中で自分なりにみつけていけるんじゃないかなって思っています。

――普段クルマに乗っていますか。

運転免許は持っているんですけど、自分では運転していなくて、人に乗せてもらっています。なぜ運転できないのかというと、どこかに不安があるからです。それと、移動中は、僕にとって思い付くことがとても多い時間です。どこにいるのか忘れてしまうくらい、すごく集中しているときもあって、その時間を渡したくないって感じですね。

――自由運転の感想を教えて下さい。

インターフェースが新しいので、まだまだ馴染めていないところはありますが、今までの運転とはまったく違うと思いました。運転という言葉自体が更新されるかなと。

運転というよりは、クルマがさりげなく進路を直してくれる、気付かれないようにサポートしてくれる、そんな感じでちょっと気付ける機会を与えてくれるわけです。それが風景の見え方として自分にフィードバックされることもあるし、ステアリングからフィードバックされることもあって、鏡を見ているみたいな感覚なんですよ。

自分のことが分かるというか。運転していると、運転手には自分の物事の感じ方が変わる瞬間があると思うんですが、それがより進化して、自分のことを知る鏡になるとおもしろそうだなという感じがしました。

街の捉え方とか、都市の見方みたいなものも変わってくるんじゃないかな。僕の場合は、便利なツールとしてじゃなくて、発見のためのツールとして利用できたら良いなと思っています。

――シミュレーターを体験したときの第一印象は?

一番インパクトを感じたのは、ステアリングの位置です。座席と、運転席の境界がない。ポジションが自分で選べるので、座る位置を数センチ変えただけで見える世界が違うというか。現在のクルマとはまったく違うものになっているのかなと感じました。

そういう意味では、座席のデザインや車内のインテリアの在り方もこれからがらりと変わってくるのかなという予感がします。

――自由運転が実現したら、乗ってみたいですか?

僕は、「人に危害を与えてしまうんじゃないか」という不安から運転を諦めていたんですけど、それがサポートされるとなれば、夢のような出来事です。やっぱり、運転自体はものすごく楽しいことだと思うので。

移動すること自体も好きです。移動しないと、自分のなかのアイデアを呼び出すことも出来ないし、考えていることも先に進まないので。

普段の生活では、「場所を変えて考える」ということを自然にしていると思います。そこに、「車内で考える」という選択肢がもう1つ生まれる。移動しながらミーティングなどもすることができる。運転手と話すということがもっと活性化して、クルマの中がクリエイティブな空間になるということもあり得るのかなと感じました。

――最初に行ってみたい場所は?

いつも通りの道でいいです。いつも通りの道を、電車以外で移動したことがないなって、今思いました。自由運転は、一番身近なはずの場所が違って見えるとか、こんなにも違う風景があるんだってことを楽しめるツールなんじゃないかと思います。

――自動運転時代に期待することは?

移動中に思いついたことをメモしたり、スケッチしたりしたいですね。

電車だったり自転車だったり、さまざまな移動の選択肢があると思うんですけど、そのなかに自由運転という枠ができれば、今までとはまったく違う瞬間が得られるのかなという、根拠のない期待をしています。

自分の意思で、ある一定の速度以上で移動したことがないので、その速度のなかで自分がどんなことをスケッチできるのかをやってみたいと思っていて。人のクルマに乗せてもらったり、電車に乗ってスケッチしたりするのとは、きっとまったく違うことが起こるのかなと。そこも、将来的に期待できるのかなと思います。

僕にとってスケッチというのは、必ずしも描くということとイコールではないんです。描くことによって、それを見た自分が、また描きたいと思う瞬間がある。そういった循環が重要になってくるんです。何十年と自分なりに検証してきた結果、自分が描きたいと思う瞬間は、移動中に起こることが分かりました。移動に変わるインスピレーションって、なかなかないのかなと。
(テキスト/近藤彩音 編集/廣川淳哉)

▲写真:谷本夏

3人のアーティスト×Honda自由運転 その他のストーリー


人にもクルマにも安全な完全自動運転でありながら、ドライバーが自由に運転を楽しめるHondaの未来のコンセプト「自由運転」が、DESIGNART TOKYO 2019に出展。会場では、初公開となる自由運転のシミュレーターを展示予定。End

HONDA R&D X SHUNJI YAMANAKA

公開日
2019年10月21日(月)〜22日(火)
会場
Honda R&D 原宿サテライトスタジオ
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-60-2
詳細
http://designart.jp/designarttokyo2019/