25年目を迎えた2020年のメゾン・エ・オブジェ・パリ 1月展

▲髙田賢三の新しいコレクションK三から。写真は3つの基本テーマのひとつMAIKO

昨年12月5日に始まったパリのストライキは、1月に入っても解決のめどがたたず、不確実な時代を象徴するかのようにスタートした2020年最初のメゾン・エ・オブジェ。

開催時にはストライキは解消されたというものの、その余波で交通機関のサービスは混乱し街中混雑が見られた。また美術館や劇場での公演までが通常通りには開催されないなど、予定どおりに物事が運ばない状況で幕が開いた。

しかし1月展は通常通り、ノール・ヴィルパント見本市会場で1月17日から21日まで開催され、蓋を開けてみれば世界最高峰の家具のトレードショーといわれるだけあって、来場者と人々の注目を集めたのはさすがだ。25年続いて来た見本市だけあってその内容は安定性を感じさせるものだった。

デザイイナー・オブ・ザ・イヤーには丸、三角、四角といった究極のシンブルなフォルムから、時代を超えて愛される照明器具などの創作を続けるマイケル・アナスタシアデスが受賞。

▲デザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞したマイケル・アナスタシアデス
©Eirini Vourloumis

今回のテーマは、『「リ」ジェネレーション!』。

2020年は、Yジェネレーション、Zジェネレーションといった20代、30代の若い世代に注目し、文字通り「リジェネーション」、つまり再生ということをテーマとしている。彼らの世代を「コミットする世代」「拡大する世代」として、大地への回帰、家の中に自然を取り入れる、物々交換、心地よさ、DIY、そしてここでもやはりサスティナビリティといったキーワードが注目されていた。

サスティナブルとは、ずっと使っていけるということでもある。時代の雰囲気を映し出す流行やブームというものより、長く使っていても飽きない形、素材といったものが注目されるのは当然で、それはある意味変わりばえのない退屈なものなのかもしれない。

しかし、かのアンディ・ウォーホールが「私はボアリングなものが好きだ」と語ったように、シンプルで変わらないもののなかに、新しさ、味わい深さ、ポップさがあり、そうした個性を感じられるアイテムが複数出展されていたのも今回の特長だろう。そのなかで特に目を引いたものをいくつか。


今回選出されたフレンチライジングタレンツの6人のうちのひとり、JULIE RICHOZの作品。

こちらはアップサイクルの例。古く馴染んだ革ジャンの革をバッグに再生しているため、同じパターンのものがひとつとしてない。ヨーロッパで集めた素材を使い、タイのメーカーThe ReMakerが制作している。

動物をモティーフとしたアイテムが目立ったのも今回の特徴だろう。オランダに本社がある「Doing Goods」。インドをはじめ世界各地に物のハンティングに行き、手工業品をあなたの家に持ち込むことを使命としている。

素材ということでいうと、アフリカ、サブサハラからはブースは小さいながらも複数の出展があり、興味深いテキスタイルを展示していた。

セネガルのDIAMAは女の人たちが手仕事でつくる草木染めのオーガニックコットンを出展。民族衣装でもある長い上着の原材料になっていたが、国際市場にはインテリアファブリックのほか、kimonoで進出を図る。


同じくセネガルのTHOTMEAは、再生プラスチィックを使ったゴザを多数出品していた。アフリカらしいカラーリングで再生プラスチックのイメージを大きく変えている。他に何種類ものモノクロのパターンも展示されていた。


こちらも再生プラスチック。フランスALMADIEはインドアでもアウトドアでも使える家具や小物を提案。


洗練された革小物で注目を集めるインドのステーショナリーメーカーNappa Doriはギフト用にレンガのセットを販売する。このキットで「ご自分の家を建ててください」、ということだそうだ。


日本からは常連のMISOKAが気を吐いていた。歯磨き粉を使わずコップ1杯の水があれば綺麗に歯を磨くことができる歯ブラシで美しいディスプレイを演出。

ため息が出るような髙田賢三の「K三」

さて、今回もっとも印象深かったもののひとつが、デザイナー髙田賢三がアーティステック・ディレクターを務める新しいブランド「K三」(ケースリー)だった。これは彼が職人、製造業者とチームをつくり立ち上げた、カーペット、ベッドリネンをはじめとするテキスタイルと家具、陶器などで構成されたコレクションだ。

▲組み合わせの妙に老練した巧さが。K三 SHOGUN

▲繊細な花のモチーフで幻想的な世界を編み出す、K三 SAKURA

レディース、メンズのファッション、舞台の衣裳と日常着、天然素材と新素材、何が流行って何が残ったのか、クラシックとモダン、そして東と西の両方の美意識を、時代の趨勢のなかで身をもって体験し、生き抜いてきた者だけがつくり得る老練した手管が感じられた。

こうしたしっかりとした技術と美意識を新しい世代がどう受け継ぎ、活かしていけるのか。メゾン・エ・オブジェ・パリ2020年9月展では、インターネットやソーシャルネットワークの世界に浸る、デジタルネイティブ世代の側面を取り上げるという。9月展は2020年9月4日から8日までの開催予定。その行方に期待したい。

ノール・ヴィルパント見本市会場外では何が?

またメゾン・エ・オブジェに行く楽しみは、同時期に開催されるノール・ヴィルパント見本市会場以外の市内各地で開催されるエキジビションにもある。番外篇として、会場以外で見つけたディスプレイをいくつか紹介して終わりとしよう。End

▲オペラガルニエ近くのエレファントパナムで行われたラリックの展示。

▲エルメスはヴィルパント見本市会場内だけでなく市内でも展示。

▲トム・ディクソンは今回会場での展示は行わなかった。話題のシェフ、アサフグラニットの新しいレストランShabourでランチイベントが開催された。そこでの作品と一皿。

▲百貨店ボン・マルシェでは佐藤オオキのnendoのインスタレーションが賞賛を浴びていた。