高速道路わきの新しい礼拝堂の設計案
ヘルツォーク&ド・ムーロンによる「Autobahnkirche」

▲© 2020, BY HERZOG & DE MEURON BASEL. ALL RIGHTS RESERVED

スイス南東部にあるアンデア(Andeer)は山や川、牧草地、森林に囲まれ、ときが止まったかのようにきれいな村が残されているという。ただ、そこには静けさや安らぎを阻む南北に走る高速道路があるそうだ。

こうした車の騒音を遮るような礼拝堂「Autobahnkirche」をこの高速道路わきに建設する、という設計案をヘルツォーク&ド・ムーロンが公開している。実はヨーロッパには「Road church」なるものがあって、観光客向けに高速道路や国道わきに礼拝堂が建てられているのだ。

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とはいえ、アンデアやその周辺にはすでに礼拝堂がいくつもあり、その多くはシンプルな漆喰の壁やフレスコ画、装飾を施した天井、木彫り細工など、建築や芸術の歴史ある宝庫でもある。

そこで、同設計では、教会や礼拝室、宗教的なシンボルさえない、近年の建築にはないものにすることで、訪れた人が一目でそれとわかる建築を目指し、どこか古めかしいもの、人間の知覚に直接訴えかけるもの、つまり聴覚や視覚の変化を求めた。

まず、外装は白く大きな壁が4枚、互いに寄りかかっているようなデザインで、礼拝堂は地下に作り上げる。内部空間は人間の耳のなかのように蝸牛状になっていて、深く降りてゆくほど周囲の騒音は小さくなり、自分の足音が強くなってゆく。

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階段を下りていくと、複数の小さな礼拝堂が現れ、最後に赤いガラスのある部屋にたどり着く。ここには楕円形の開口部があり、目の前に広がる緑豊かな村の風景が楽しめるようになっているのだ。End