オブジェクト全体を一気にプリントする超高速3Dプリンタ
「xube(クスーブ)」

3Dプリンタは、ポピュラーなFDM(熱溶解積層)方式やSLA(光造形)方式を含めて、基本的には素材を薄く硬化させた層を重ねていくことで目的のオブジェクトを生成する。そのため、いかに積層を細かくしても、ミクロ的に見れば表面に段差があり、それを目立たないように精細にすればするほど出力時間がかかってしまう。それが、3Dプリント技術を量産工程に応用する上でのボトルネックとなっていた。

これに対して、4年ほど前に基本原理が考案され、約2年前から製品化に向けて開発が始まったクソログラフィは、ハイドロゲルやウレタン系の液状合成樹脂が入った透明タンクを回転させながらレーザービームを照射し、光子が吸収される領域を正確にコントロールすることで、造形データ全体を一度に硬化させる新規軸の3Dプリント技術である。

その大きな特徴としては、プリント時間が大幅に短縮され、従来は数十分かかっていたものがわずか数分で完了できることや、表面に段差のない滑らかなプリント結果が得られることが挙げられる。また、造形物は樹脂液のなかに浮かんだ状態でプリントされるため、複雑な形状でもサポート材などを使わずに出力することができ、造形後にそれを除去する手間も不要となる。

クソログラフィによる3Dプリンタの実用化を目指すxolo(クソロ)では、その最初の製品である「xube(クスーブ)」の出荷段階に差し掛かっており、特定機関への先行販売(価格、販売日は未定)を計画中だ。xubeは、主にこの技術の応用の可能性を探るための実験機であり、最大50x70x90mmのオブジェクトを20秒から5分でプリント可能とされている。

ウェイティングリストへの登録は大学や研究機関が、研究分野を明記したうえで行う必要があるため、個人レベルで使えるようになるのは、まだ少し先になりそうだが、もしも現在属している組織が要件を満たしているならば、今のうちに手続きを行っておくことをお薦めしたい。End