サスティナブルな建築のあり方を考える
長坂常/スキーマ建築計画の旋盤加工プロジェクト

長坂常が率いるスキーマ建築計画は、2020年に行われる予定だったヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の参加を通じて考案したプロジェクトである、丸鋸を用いた旋盤加工を公開した。

世界に向けて個人で好きな時に発信できるツールがありながら、わざわざ国内で作品を作って多くの費用と時間をかけて遠い国まで運び、また同時に多くの人が作品を展示して、それを多くの人が訪れて見るという国際展示のあり方にすこし疑問を感じていたという。

そこで同展では、「移動する意味」を感じ取れる展示にしたいと考え、その過程であらためて古材と向き合い、解体されて捨てられる家屋の廃材を使った展示物を作ろうということになったそうだ。

そして、古材自体では強度が十分保証できないことから、古材の他に単管足場をハイブリッドさせることを考えて共通のルールとし、誰がやっても同じようにできる方法として、この丸鋸を使った旋盤加工を編み出した。

柱や梁などさまざまな寸法の木材を48.6Φとし、装飾性を帯びたコネクションパーツも作製。この方法は古材だけでなく、廃材の合板などを重ね、それをベースに旋盤加工して家具などを作ることが可能とだとしており、このヴェネチアをきっかけにより掘り下げた新しい家具のシリーズを生み出すことを目指した。

実際に解体を通して、その建物自体にも変遷があって、時代ごとのニーズに合わせ増築され何層にも複数の時代の材料が重なっていることに着目。この解体からヴェネチアで改めて展示作品として組み、会期後はノルウェー・オスロに移動して再び常設となることになった。

フランス・パリの石造りの建築のように、動かず使い続けられるサスティナブルな建築のあり方もあるが、日本の木造建築のようにニーズに合わせて増築され、その後は解体・移動されながら再び使い続けられるサスティナブルな建築のあり方もあるという提案となっている。

また、2021年4月15日(木)にオープンした、伊藤忠商事によるSDGsに関する取り組みの発信拠点「ITOCHU SDGs Studio」で、この新たな旋盤加工を用いた家具を設置している。End