スキーマ建築計画が済州島で手がけた
街の古い建物を再開発するプロジェクト「見えない開発」

▲Photographer:Ju Yeon Lee

長坂常が率いるスキーマ建築計画は、韓国で手がけたプロジェクト「見えない開発」を公開している。「ARARIO Tapdong project」とも呼ばれるこのプロジェクトは、済州島の北に位置するタプトンの街全体を再開発するものである。

この地域は1990年代に済州島最大の繁華街として栄えたが、その後は繁華街が済州市の南側の新都市に移り、開発が進まず、徐々に廃れていったという。そこでARARIOが、映画館跡地を美術館にコンバートした「Arario Museum Tapdong Cinema」をオープン。

荒れ果てた場所で値段も安く、同社はその周辺をまとめて購入。飛び飛びながら近隣の建物を20軒近くも所有していたという。そして、古い建物を生かした街づくりに挑戦するARARIOは、ナガオカケンメイのロングライフデザインという考え方に出会い、「D&DEPARTMENT JEJU by ARARIO」というプロジェクトがスタート。

▲D&DEPARTMENT JEJU by ARARIO Photographer:Ju Yeon Lee

さらにその延長として、「FREITAG store by MMMG」と、済州島全土を自転車でつなぐためのハブとなるレンタルバイク屋「Portable」が入る1棟、そして、ARARIO MUSEUMの下にカフェ「creamm」を計画した。

▲FREITAG JEJU by MMMG Photographer:Ju Yeon Lee

1棟の一貫したデザインを全うする新築の開発に対して、今回の開発はバラバラな飛び地で行われるものである。1棟ずつバラバラにデザインして予想のつかない街にすることより、建物を横断した人の動きを生み、賑わいのある街にしたいと考え、「見えない開発」という共通の設定を考案したそうだ。

▲creamm Photographer:Ju Yeon Lee

近づいて中が見えてこないと変化に気づかず、中に入って面白さがわかる。その先のもう1棟の建物も同じように変化があるのではないか、と期待させる。そのために、外壁は極力既存のままとし、中身を変えていった。

▲Portable Photographer:Ju Yeon Lee

その際、グランドフロアでつながりを生むべく、できるだけピロティスペースを確保。ハンドリフターを使って自由に植物や家具、サイクルスタンドなどが動かせるようにし、人のアクティビティを豊かにして街に賑わいを生み出す計画を行った。End