太陽光をコントロールして
暑さ・寒さに「自己適応」するガラス

▲©️Christian Ladewig

世界の気候変動により、夏の暑さや冬の寒さが一段と厳しく感じられる昨今だが、そうなると暖房や冷房の需要が高まり、エネルギー消費量もなかなか抑えにくくなるだろう。こうしたなか、シンガポールの南洋理工大学の研究チームは、新しいガラスを発明した。それは、暑さや寒さに対して「自己適応」するガラスである。

窓ガラスには、二酸化バナジウムナノ粒子、アクリル樹脂、低放射率コーティングを層状に施すそうで、これが温度の変化にただちに反応。部屋全体を効果的に温めたり涼しくしたりでき、エネルギー消費を抑えることができるという。

もちろん、このガラスには電気的な仕組みはなく、光のスペクトルを利用して加熱と冷却を実現。夏場には、ガラスが太陽熱を抑え、表面から熱を放射する放射冷却で部屋を冷やしてくれる。一方、冬場には逆の現象が起こり、熱損失を少なくして部屋を暖めてくれるのだ。

窓は建築に必要なものだが、エネルギー効率が低いなど、課題となる要素でもある。そこで、さまざまな科学者がこれまで、低放射率コーティングやスマートガラスなどでこの問題に取り組んできた。しかし、いずれも加熱と冷却を同時に実現することができなかったそうだ。

研究チームは、概念実証において、7つの気候帯にある人口密集地域を網羅した気候データシミュレーションを使い、新しいガラスの省エネ性能を検証。

温暖な季節でも寒冷な季節でも省エネを実現したそうで、中規模オフィスビルを想定した市販の低放射率ガラスに比べて、最大9.5%、年間約330,000 kWhの省エネ性能を発揮した。これは、シンガポールの60世帯に1年間の電力を供給できるエネルギーと同じだとしている。End