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2022.08.24 18:30
スペイン・バレンシアでは、デザインプロジェクト「世界デザイン首都2022」が行われ、公式プログラムの会場となる新しいパビリオン「Agora Valencia」がアユンタミエント広場に登場した。
設計は、世界デザイン首都2022のキュレーター兼プロジェクトディレクターである、建築家のMiguel Arraizが担当した。伝統と革新、職人技と産業を融合させることを目指し、木材と「MDi(Minerals, Design, Innovation)」と呼ばれるセラミックに似た素材のみを使用。地元のデザインのストーリーを伝え、持続可能性と素材の未来を考えるパビリオンを街の中心に建てることを構想した。
Arraizによると、「循環性と耐久性への明確なコミットメントとして、パビリオンは、モジュール式で取り外しが可能な素材と建設システムを採用」。床面積350平米、24x10x9mの建物を覆うのは、Inalco社とWandegar社が開発した、ファサードに垂直に配置されたタイルで、これにはMDiを使用しており、時間が経つとともに光がにじみ出してくる。MDiはミネラル由来の素材で、リサイクル素材を50%使用しているとされる。
また、屋根を支えるブレースはManolo Garcíaによるもの。優れた大工であり、地元で開催される「火祭り(ファジャス)」のアーティストでもある彼は、さまざまな文化が融合した歴史ある地・バレンシアをイメージし、地中海の波を表現している。
もちろん、「Agora Valencia」は暑さを和らげる空間でもある。垂直のスラットによって東西からの太陽光を遮りつつ、木製の屋根は南からの光を抑え、なおかつ自然な換気をもたらすそうで、パビリオン内の温度は周辺と比較して最大10度も低い。エネルギーを一切使わず、CO2排出量ゼロを実現しているそうだ。