スペイン・バルセロナの森林研究のための
木造観測施設「FLORA」

Photos by Adrià Goula

バルセロナのクイセロラ自然公園内にある「FLORA」は同市の教育機関 カタルーニャ先端建築研究所(IAAC)の先端環境建築・生命都市研究科のチームが設計を手がけた、森の中で研究者が継続的に分析・観察活動を行える木造観測施設。

全長17km・幅6km、面積8,000ヘクタールの広大なクイセロラ自然公園は、標高512mの丘と森林があり海に近接した自然豊かな場所である。190種類の脊椎動物が生息し、アレッポマツをはじめ約1,000種類の植物が自生している。

「FLORA」はアメリカの生物学者 マーガレット・D・ロウマンが建設した林冠観察のための「森の遊歩道」を参考にしたデザインされた。IAACが同公園内に設置したキャンパス「Valldaura Labs」内にあり、研究者は滞在をしながら公園の林冠や生物多様性の研究や気象観測などに取り組める。

建造時に使用された高さ8.5mを超える70本のマツは、持続可能な森林経営とトレーサビリティを遵守しながら公園内で調達。プロジェクトのコンセプトである建材の輸送距離「ゼロキロメートル」を実現している。

伐採された木は、Valldaura Labs内にある製材施設や小型CLTプレス機などを利用して、学生自身の手でCLTパネルや積層梁、無垢材に加工した。コア構造は30×30cmの4本のCLTの柱で支えている。橋は独自の接着剤を使用したCLT(木材)でできており、最長部分は約12mに達する。

キャビンには2層の天然コルクパネルを張りつけ、断熱性と防音性を考慮した。周囲に張り巡らされたネットは、植物の成長を妨げることなく野生生物から気づかれないようにコンピューターで設計を行い、手作業で仕上げている。

ワーキングスペースや上映スペース、鳥の巣箱やバードウォッチスペースとしても使用でき、世界中の森林で展開可能な設計となっているのも「FLORA」の特徴のひとつだ。End

Photo:Valldaura Labs

Photo:Valldaura Labs

Photo:Valldaura Labs

Photo:Valldaura Labs