アップルを離れたジョナサン・アイブは、自らのデザインファームであるラブフロムを設立して、チャールズ3世の戴冠式の紋章のデザインやオーディオメーカーのリンの名作ターンテーブル「Sondek LP12」のリデザインを手がけるなどしてきた。そして、現在は、ChatGPTの開発元であるオープンAIとともに、生成AIデバイスの開発も行っていると言われている。
もともとアイブはコンピュータ機器に限らず、文具からバスタブに至るまで、あらゆるもののデザインに興味があったので、アップルに留まっていてはデザインできなかったさまざまな分野の製品を視野に入れて、これからも活動していくことだろう。そんな彼の最新作が、アパレルメーカーのモンクレールのためにデザインしたモジュラージャケットである。
「ラブフロム、モンクレール ダウンジャケット」(ライトイエロー/ホワイトアイボリー ¥487,300)、「ラブフロム、モンクレール フィールドジャケット」(ライトグリーン/ホワイトアイボリー ¥402,600)、「ラブフロム、モンクレール パーカー」(ライトブルー ¥381,700)とストレートなネーミングのこのシリーズは、もちろん単体でも着られるが、重ね着を前提にアイブならではのユニークな仕掛けが施されている。それは、シリーズアイコンにもなっているマグネットボタンであり、後ろ襟の下方や袖口に設けられたこのボタンが互いに吸着することで、重ねたときの一体感が生まれ、動きによるズレを生じさせることなく快適な着心地を実現するのである。
それぞれの製品は、1枚のリサイクルナイロン生地を折ることでつくられており、シームレスな仕立てを実現するために、製造には一般的なものと比べてはるかにサイズが大きな織機が使われている。
アップル時代から、製品本体だけでなく付属品やパッケージングに至るまで細かなディレクションを行っていたアイブらしく、このシリーズのパッケージも1枚の紙から折り出されており、さらに手元でレイヤリングのシミュレーションができるペーパーモデルも付いてくる。4種のペーパーモデルに対して、実際に現時点でのコレクションは3製品で構成されていることから、バリエーションは今後増えるものと考えられ、それはもしかすると春先用のライトなジャケットなのかもしれない。