構造色インクジェットがつくる、素材表現の新領域
#FUJIFILM

富士フイルムが独自開発した「構造色インクジェット技術」は、色素をいっさい用いず、インク膜内に形成された微細構造が光を反射することでクジャクの羽やタマムシの外殻などと同じ「構造色」を発現させる新技術だ。この技術を用いた企画展「IMPRESS」が今年の3月、表参道のTIERS GALLERYで開催された。デザイン事務所STUDIO BYCOLORを主宰する秋山かおりとのコラボレーションによって実現したこの企画展に、富士フイルムが進める共創的デザインの様相を探った。

「IMPRESS」展で配布された構造色の素材サンプル。STUDIO BYCOLOR × 富士フイルム「CLAY material LAB」による協働成果の象徴でもある。見る角度や光で色が変わる“色のない色”の魅力を体感できる。

構造で発色する、新しい“印刷”のかたち

見る角度や背景色によって色が変わる「構造色」は、自然界ではチョウや鳥の羽、シャボン玉などにも見ることができ、色素による発色ではなく、光の干渉や回折、散乱などによって、言わば「色があるように見える」現象だ。この構造色を、特殊なインクジェットプリンターによって印刷可能にしたのが「構造色インクジェット技術」。同社の分子制御技術を応用し、さまざまなパターンやグラデーションを構造色で自在に描画することができる。

「一般的に印刷物の色はCMYKの4成分によってつくり出していますが、構造色インクジェット技術で用いるインクには、色素となる染料や顔料がありません。インク自体に色はなく、フィルム基材上に吐出したインクの組み合わせと濃度を変え、インクの膜内に微細な多層構造を形成し特定の可視光領域の波長を反射して発色します。こうした“印刷物”には、ほかにはない色合いと立体感があり、構造が変わらない限り色褪せないのが特徴です」。