デザイナー ベニ・アランが手がけた
森と対話するインスタレーション「Pulse」

「Pulse」Photo by James Retief

英ノーフォーク州では、毎年8月に音楽とアートのフェスティバル「Houghton Festival」が開催されている。メイン会場は18世紀に建てられた壮麗な邸宅「ホートン・ホール(Houghton Hall)」で、敷地内の庭園や森、野原などにステージが設けられ、各所で多彩なアートインスタレーションが展開されることで知られている。

Photo by Rikard Kahn

Photo by Rikard Kahn

今年のインスタレーションの目玉として登場したのが、ロンドンに拠点を置く建築・デザインスタジオ「Ebba Architects」が手がけたコンセプチュアルアート「Pulse」だ。同スタジオを率いる建築家兼デザイナーのベニ・アラン(Benni Allan)がフェスティバルのために制作した、テクノロジーを介して人間の知覚と自然をつなぐ没入型の作品である。

作品は、森のなかに設置させたポディウム(基壇)とその上部に吊り下げられた大きな四角い照明で構成されている。木々のざわめきをはじめとする周囲の自然環境のエネルギーを高感度センサーで捉え、光や音、振動に変換して表現する。

Photo by James Retief

Photo by James Retief

来場者は、脈打つように絶え間なく変化する光や移ろいゆくサウンドスケープといったリアルタイムで敏感に反応する環境に身を置くことで、まるで森と対話するかのように内省と感嘆の時間を過ごすことができる。そして、テクノロジーを介した光や音との相互作用を通じて、個性豊かな木々とのつながりを見出す体験が生まれる。

Photo by Rikard Kahn

「Pulse」は、イベントの閉幕後も撤去されることなく、常設作品として展示されている。これにより、自然との対話は絶えることなく続き、時間の経過とともに季節や天候の移り変わりや木々の微細な変化に呼応しながら進化していく。まさに、森の生命力を象徴する生きたモニュメントとして成長を続けている。End

Photo by James Retief