及川みのる展
「土の神」と対話する陶人形

六本木、AXISビル 3Fの「サボア・ヴィーブル」は、クラフトギャラリーを併設しているショップです。3Fの「サボア・ヴィーブル」は、クラフトギャラリーを併設しているショップです。明日、4月8日(木)まで開催している「及川みのる展」では、愛らしい土の人形を展示しています。

過去にもサボア・ヴィーブルで展覧会を重ねてきた陶芸家の及川みのるさんは、近年、制作環境を茨城の一軒家に移しました。土から生まれる立像の佇まいに惹かれるという及川さん。今回は個展のタイトルを「埴安姫(ハニヤスヒメ)」と名付けました。

埴安姫とは「土をつかさどり守る神。土の神」(広辞苑 第四版)のこと。ユラユラと揺れる一体一体の人形が、それぞれの題材とそれに即した姫の名前を持っています。豊かな表情の口元から、見る者に語りかけてくる言葉が聴こえそうです。

及川さんは、釉薬も自ら試行錯誤。作品は一気につくり上げることが多く、人形の持つ物語を考えながら眺める時間が多いと言います。例えばこの人形は、生物界のバランスを司る姫。地元で聞いた鳥たちのエピソードが創作の源になっています。

都市化や環境問題に刺激されて生み出されたのが、カタツムリを模した姫。この作品では珍しく台座がクルマになっているのがポイントです。

一方、こちらは養蚕に思いを馳せる「お蚕(かいこ)さま」をテーマにした人形。静かな佇まいの中にも強い存在感を放っています。

作品のカタログが収められていたのは、鉱山技師だった及川さんの父が使用していた「発破用のダイナマイトの収納箱」でした。

最終日の明日、サボア・ヴィーブルにいらした方は、ギャラリーで作品の背景を尋ねるとさまざまな興味深い話が伺えるはずです。