「2010年度アジアデザイン賞」/香港デザインセンター インタビュー
「これからのアジアを見据えて」

アジアデザインアワード2009授賞式より。

現在作品募集中の「アジアデザイン賞(DFAA: Design for Asia Award)」についてのレポートの2回目です。今回はその特徴とアピールポイントなどについて、同賞の日本でのPRを担当する香港デザインセンターの高田昭代氏にお話を聞きました。

商業的成功やブランド価値への貢献が重要な判断材料

ーー今年で8回目となるアジアデザイン賞ですが、他のデザイン賞との違いは何でしょうか?

アジアデザイン賞はデザインの優秀性はもちろんですが、そのデザインプロジェクトがどれだけ商業的に成功しているかが、審査の重要なポイントになっており、この点において、他のデザイン賞とは大きく異なっています。言い換えれば、美しい、機能的に優れている、革新的である、ということだけで受賞の対象になるのではなく、そのデザインを採用したことでどれだけ企業価値が上がったのか、ビジネスとして成功したのかが、より重要な判断材料になっています。日本企業は、デザイン賞にエントリーする場合、デザインの優れた点を強調、説明する傾向にあり、商業的成功やブランド価値への貢献といったことを説明するのがあまり得意でないように思います。

その他、アジアデザイン賞のアピールポイントは、近い将来世界最大の市場となるであろう中国やアジアを主眼としたアワードであるため、それら地域での露出度が高く、効率的なPRにつながるという点です。実際に欧米企業は、アジア市場でのPRを目的にエントリーするケースが多いのです。

▲受賞者に贈られるトロフィー。

中国はじめアジアの巨大市場を視野に

—— 実際に、アジアデザイン賞の受賞が中国本土でのプロモーションにつながるのでしょうか?

応募者の多くがは中国市場へのリーチにメリットを感じているのは間違いありません。アジアデザイン賞は受賞作品を毎年12月に香港で開催する「ビジネス・オブ・デザイン・ウィーク(BODW)」において展示し、アジアの主要メディアと協力して特集記事などを制作するため、BODW参加者(毎年3万人以上)をはじめ、香港対岸の深セン、広東省など人口にすると3億人程度の中国の人たちにリーチすることができます。このPR効果に期待する応募者も多いと思います。

——アジアデザイン賞受賞後に、受賞者のビジネスが大きく発展したという事例あれば教えてください。

受賞によってネットワークが広がり、香港メーカーからの問い合わせや香港のデザイナーと協力する機会が増え、香港だけでなく中国からの情報も入ってくるようになったという話はいくつもあります。

日本の国内市場が飽和状態にある現在は、海外とのネットワークを広げ、新規プロジェクトの情報が、これらのネットワークを経由して入ってくるチャンスが増加することで、ビジネスの発展にもつながると思います。

海外の受賞者の中には、アジアデザイン賞で取り上げられたことにより、香港あるいは中国から新規受注を受けたケースがいくつも見られますし、2008年のパートナー国だったオランダの場合は、パートナーとして参加した結果、若手のデザイナーたちが香港にオフィスを構え、仕事をするようにもなりました。現在、何人ものオランダ人デザイナーが香港、中国でデザインビジネスを展開しています。

▲毎年12月に開催されるビジネス・オブ・デザイン・ウィークのガーラディナーでは、アジアデザイン賞の受賞者をはじめ世界中のデザイン関係者が集う。

日本デザインへの大きな期待

——アジアデザイン賞の主催者として、日本のデザインをどのように 捉えていますでしょうか?

香港は基本的にひじょうに親日的です。日本のトレンドをとても意識していますし、日本のものが大変好きな地域であると思います。それはファッションしかり、雑誌しかり、映画やテレビ番組、アニメ、ゲームといったコンテンツしかりです。

デザイン界においては、日本がもちろんアジアのリーダーであり、香港や中国を引っ張って行ってくれると考えますが、まだまだ日本のデザインのイメージがアジアの人々の中で確立されていないことも事実です。トレンド情報は、テレビや映画、雑誌、インターネットを通じて24時間香港に入ってきますが、いわゆる「デザイン」という分野においてはなかなか香港に情報が入ってこないのが現状です。

アジアデザイン賞の主催者としては、まだ知られていない優れた日本のデザインを掘り起こし、広くアジアに知ってもらいたいと考えています。また、アジアデザイン賞はその手助けができるプラットフォームだと考えます。

▲2009年のビジネス・オブ・デザイン・ウィーク(BODW)のオープニング。今や会期中に世界中から3万人以上が訪れるイベントに成長した。

——アジアデザイン賞への応募を検討している日本の企業やデザイナーへ、メッセージをいただけますか。

アジアデザイン賞はGマークやレッドドットといったデザイン賞と比較すると、まだまだよちよち歩きのデザイン賞です。これらの歴史のあるアワードと肩を並べることはできませんが、これからのアジアの時代を見たときに、「優れたデザインと商業的成功を兼ね備えたデザインプロジェクトを発掘し、中国はじめアジアに広く発信する」というアジアデザイン賞の役割は、日本の企業やデザイナーが求めている方向性と合致していると思います。

国内だけを見るのでなく外の世界に、皆さんのネットワークを広げることができるチャンスであると考えています。英語や中国語ができないというハンデはあっても、デザイナーの皆さんにはデザインというコミュニケーションのツールがあるのですから、どんどんそのツールを利用して世界に出ていっていただきたいと思います。

アジアのマーケットが拡大するなか、ヨーロッパ各国がとてもアグレッシブにアジアに対して行動しています。日本は飛行機で数時間の位置にありながら、ヨーロッパ勢にはかなり後れをとっているのが現状です。ぜひどんどん外に出て行って、皆さんの実力を披露していただきたいと思います。

アジアデザイン賞(DFAA: Design for Asia Award)募集概要

主催:香港デザインセンター

応募対象分野:下記18カテゴリーのデザイン。
●アパレル及びアクセサリー・デザイン
・日常ファッション:メンズウェア、レディスウェア、子供服
・機能性ファッション:スポーツウェア、防護服
・ファッション雑貨:フットウェア、宝飾品、めがね、バッグ
●コミュニケーション・デザイン
・アイデンティティ&ブランディング:ビジュアル・アイデンティティ、ブランディング計画、環境グラフィック、標識
・インタラクティブ・メディア:デジタル装置、ウェブサイト、CD/DVD ROM、携帯アプリケーション
・パッケージ
・出版:書籍デザイン、雑誌デザイン、年次報告書
・ポスター/販促素材:ダイレクトメール、カード、ポスター
・タイポグラフィ
●プロダクト/工業デザイン
・家庭用品:家庭機器、キッチン機器、照明
・ホームウェア:ホームウェア、ホーム雑貨、キッチンウェア、家具
・ワーク/商業機器:オフィス/ビジネス機器、家具、照明、商業/工業機器
・コンピュータ/通信:コンピュータ機器、周辺機器、PDA、電話
・レジャー/エンタテインメント:スポーツ器具、オーディオ/ビデオ機器、玩具、ゲーム
●環境デザイン
・ホーム:住宅スペース
・商業:作業スペース、小売スペース
・ホスピタリティ/レジャー:ホテル、レストラン、バー、スパ
・文化、公共、展示:公共施設、展示デザイン

応募基準:2008年1月1日から2010年7月31日までの期間中に1カ国以上のアジア市場に商業製品として投入されたデザインが対象。

スケジュール:
●応募締切:2010年7月31日
●第一次審査:2010年8月
●大賞審査:2010年9月
●受賞式典:2010年12月

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日本語 info@mypressroom.net

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