ミラノサローネ2011 レポート 4 /パナソニック電工
「(standard)3 piano-forte」(スタンダード3乗 ピアノ-フォルテ)」

「天から降り注ぐ光」

パナソニック電工は4回目のサローネ出展となる。今回はブレラ地区のミュージアムで、最新のLED技術を駆使したインスタレーションを展開した。

今年は国際照明機器見本市「ユーロルーチェ」の開催年ということもあり、フィエラ会場だけでなくミラノ市内のギャラリーでも照明、特にLED製品をメインにした展示が多かった。そうしたなかでパナソニック電工が訴求したのはセンサー技術を組み合わせたインタラクティブな照明環境だ。

「響き合う光」。300個のLEDユニットと距離画像センサによって、来場者が光を鍵盤のように操り戯れる。

会場構成を担当したのはイタリア人デザイナーのフェルッチョ・ラビアーニ。展示コンセプトを「(standard)3 piano-forte」(スタンダード3乗 ピアノ-フォルテ)とし、3フロアにわたって大きく6つのインタラクションを展開した。例えば「天から降り注ぐ光」では人が近づくと上部に設置されたLED照明が反応して光のプログラムをスタートさせたり、「響き合う光」では300個のLEDユニットと距離画像センサーによって来場者が光の明滅を操ることができる。

「誘導する光」。有機EL照明パネルの変化する光で、奥の空間へと導く。

もう1つの大きな目玉は、次世代照明と目される有機EL照明パネルである。パナソニック電工は今回初めて、消灯状態を透明にできる有機EL照明のプロトタイプを参考出品した。パネルの薄さや均一な面発光、電流調整で調光できるといった特徴を生かして、地下フロアでは鏡を張り巡らせた展示室で光が人を導くような幻想的なインスタレーションを発表した。

「有機EL照明パネル(透明)。Photo by F. Chimenti

単にスイッチのオンオフで暗い場所を明るくするのが照明の役割だとしたら、これらのインスタレーションで体験したことはその常識をはるかに超えている。デバイスと技術の進化によってスマート化された光は人の動きを読み取り、もっと人に寄り添う存在となり得ることを教えてくれる。

「新製品のLEDユニットーワンコア(ひと粒)タイプと既発売のLED製品群から成る照明。

ちなみに「piano-forte(ピアノ・フォルテ)」とは、イタリア語で音の強弱を意味し、音の強弱を可能にした鍵盤楽器のことで、ピアノの初期形態でもあるという。そこから音楽の世界が革新的に広がったように、光もダイナミックかつ繊細に操ることで人の心を豊かにする多彩な表現を生み出すことができるはずだ。本展は、そんな次世代照明のあるべき方向性、コンセプトを見事に体現してみせた。(文・写真/今村玲子)


今村玲子/アート・デザインライター。出版社を経て2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在『AXIS』などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらまで。