REPORT | 展覧会
2011.08.19 16:24
信州・松本における夏の恒例音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」が31日まで同地で開催中です。21日からは、小沢征爾総監督がタクトを振るメイン公演、バルトークのオペラ「青ひげ公の城」がいよいよスタートします。
1992年から始まった「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」の開催も今年で20回目を迎えました。今では国内随一の音楽の祭典として、海外からも高い評価を得ています。
その認知度や評価を支えているのが、総監督を務める小沢征爾氏の存在なのは間違いありません。世界に名だたるマエストロの勇姿を一目見ようと同フェスティバルの開催を心待ちにしている人も少なくないといいます。今年はさらに、ダンスカンパニー・Noismの芸術監督である金森 穣氏を演出・振り付け役に迎えたオペラ「青ひげ公の城」と、バレエ「中国の不思議な役人」(どちらもバルトークの作品)に大きな注目が集まっています。
▲バルトークの公演が行われるのは伊東豊雄氏が設計したまつもと市民芸術館。ホールに向かうアプローチのつくりが何とも幻想的です。
今週日曜日から始まる本公演を前に行われたゲネプロでは、「青ひげ公の城」でフルオーケストラを前に力強い指揮を披露した小澤氏の姿、さらにオペラ演出は今回が初めてという金森流の先鋭的な身体表現が、一足早く公演を目にした人たちの目を惹き付けました。
▲『中国の不思議な役人』で指揮を執る沼尻竜典氏の演奏を、総監督という立場から見つめる小澤征爾氏。氏の登場で、ピットの演奏家やスタッフ、観客にも緊張が走ります。
青ひげ公の城内の7つの扉の奥に興味を持った新妻のユディットが、青ひげ公のエゴイズムのすべてを垣間見るというオリジナルストーリーに、自己と他者、あるいは表層と内面という二項の葛藤を織り交ぜた演出は、不気味さ漂う物語に“人間性”という深みを与えることで、より魅惑的な作品になっている印象を受けます。
また、「中国の不思議な役人」を含めた2つの演目のステージデザインを、パリを拠点とするアーキテクトグループのDGT(ドレル・ゴットメ・タネ/アーキテクツ)が手がけているのも注目です。コアメンバーのひとりである田根 剛さんは、9月1日発売号の幣誌の取材において、今回のデザインについて次のように語っています。
▲ステージデザインの調整のため松本に長期滞在するDGTの田根 剛さん。「本番までできることを最大限やり遂げたい」といいます。
「『青ひげ公の城』では、目に映る世界とそうではない世界の双方を示す、虚が交差する幻想的な舞台を試みました。相反する2つの世界の狭間に生まれる表現とは何なのかを問いながらの作業でした。また、『中国の不思議な役人』では、“社会の闇”にかたちがあるとしたらどのようなものかを念頭にデザインしました」。
▲『中国の不思議な役人』のステージから。ゲネプロ終了後、ダンサーたちが細かな動きを入念にチェックしています。まだまだ変更が加えられそうな様子。
残念ながら、21日から4日間にわたって行われるバルトークの演目のチケットはすでにソールド・アウトということですが、松本公演終了後は、中国の北京、上海などへの巡回も予定されており、松本市発の楽祭のさらなる飛躍が楽しみです。
▲衣装や小道具などが並ぶバックステージを覗かせていただきました。
バルトーク公演のステージデザインを含むDGTの活動を紹介した幣誌153号は9月1日発売となります。ぜひ、チェックください!