シリーズ第2回「LIVING & DESIGN 2015」を語る
【光洋製瓦 編】

10月14日(水)から3日間にわたり、大阪南港ATCホールで住空間・インテリア関連産業見本市「LIVING & DESIGN 2015」が開催されます。出展者にフォーカスして今年の見所を紹介するシリーズの第2回は、2013年から3回連続の出展となる光洋製瓦です。

同社は姫路城にも使われる「いぶし瓦」の製造元の1社として知られ、長年にわたり播磨の文化財や神社仏閣の屋根瓦を製造・販売してきました。展示の目玉となるのは、渋い銀色の光沢が魅力的な伝統建材に新たな活路を見出そうと、職人と試行錯誤の末に開発した「ARARE(あられ)」と呼ぶいぶしプレートです。住宅の洋風化などもあり瓦の需要の先細りが避けられないなか、インテリア感覚で幅広い用途に活用できる同製品の魅力などについて、代表取締役の笹田奈都子さんとインテリア事業部長の奥平勝司さんに聞きました。

▲ いぶし瓦の製造技術の継承と新たな需要の掘り起こしを狙って開発された「ARARE」のプレート各種。正方形のピースの大小によって4種が展開されるモザイクシリーズのほか、横目地のラインシリーズが揃います。

瓦の製造技術を生かした内装材

「ARARE」を製品として売り始めたのは4、5年前からです。屋根瓦の需要が低下し、このままではいぶし瓦の製造技術が途絶えてしまうのではないかという危機感が、開発のきっかけです。有名なデザイナーの方に依頼をし、話題性でもって需要を掘り起こすやり方もあったかもしれません。ただ、特性がわかっていないと、どうしても製造現場にしわ寄せがきます。新たな投資をせず、継続して簡単につくれるもの。なおかつ今の住空間や商業施設に内装材としてスペックインできるようなものをということで、インテリア分野にも明るかった奥平に当社に来てもらい、開発を一任しました(笹田さん)。

アイデアを詰めながら、同時に製法まで考える。新製品を生み出すというよりも、道具をつくるような感覚でやってきて、ようやく今のかたちにたどり着きました。4日間窯の中で焼いた小さな瓦のピースを下地材にモザイク状に貼り付けてシート化し、主に内装パネルとして提供しています。ピースの大きさはスーパースモールからラージまで4段階あり、粒の大小によって表情は大きく異なります。製造しやすいという理由からランダムに並べているので、自然とできる凹凸やそれによって生まれる微妙な影の出方などが特徴です(奥平さん)。

▲ LIVING & DESIGNの会場で初お披露目となるのが、瓦の素材を長方形に切って貼り合わせた「ARAREレゴ」と呼ぶタイプ。凹凸が強調された表情や独特の光沢が素材の新たな魅力を引き出します。

色むらや微妙なグラデーションが味わい

ARAREは、いぶし瓦の製造における弱点を見事に逆手にとった製品でもあるんです。屋根瓦はすべてを均一に焼き上げる必要があります。そのために、時間、温度、量に細心の注意を払わなくてはいけません。しかしどうしても上手く揃わないことがあります。その点、ARAREは色むらから生まれる微妙なグラデーションが味。職人の技術を生かしつつ、すべてを規格にあてはめていないところに、これまでにない素材としての魅力が表れています。職人が1つ1つ手づくりしていますので、手で触れてもらえれば本物の価値も伝わるはずです(笹田さん)。

シートの施工は壁にノリを塗って貼るだけ。タイル施工とほぼ同じ要領でできます。機能的にも多孔質セラミックなので消臭などの効果が期待でき、耐久性については言うに及びません。ただ、持ち味を出すために製造の自動化はしていないのでどうしても価格が高くなってしまう。そのため、現在の利用はホテルや商業空間が中心です。今年のLIVING & DESIGNでは、これまで販売してきた正方形のピースに加え、レゴと呼ぶ長方形のタイプを初めて展示します。大きなシートの需要にも応えていきたいですし、サイズについてはカスタマイズにも応じますので、ぜひ会場で相談してほしい(奥平さん)。

▲ 光洋製瓦代表取締役の笹田奈都子さん。「住宅の状況は二極化しています。そのなかで、本物を探しているお客さまに私たちの商材をどう知ってもらい、届けるかが課題」と話します。

海外にも届けたい、いぶし瓦の魅力

出展を機に、サンプルの送付依頼を受けたり、施工に発展する例はこれまでもありました。商社からARAREを取り扱いたいという話をいただいたこともあります。ただ、出展の目的はビジネス面への期待だけではありません。ブースに立ち寄られた方との会話は、市場のニーズが把握できるなど、大いに勉強になります。自分たちが成長するためには、まず考えを新たにすることが不可欠です。姫路の奥地で井の中の蛙でいてもしょうがないんです。いろいろな人と出会い、会話を重ねながら、つくり続けていく。そうやって少しずつ自分たちのセンスも変わっていければいい。瓦なんてもうダメだろうと思っていた人たちがARAREを目にして、「瓦なんですか?」と驚く表情を見るのが今は何よりの喜びです。自分たちの力でここまで瓦を崩すことができたという自負が、活力になっています(笹田さん)。

▲ ARAREを一から開発したのがこの方、光洋製瓦代表取締役のインテリア事業部長の奥平勝司さん。以前は大阪でインテリア内装関連の仕事に従事。笹田社長とは幼なじみで、その縁でARAREの開発に携わることになったといいます。

とはいえ、ARAREを知らない人はまだ多いので、そこはきちんと継続してアピールしないといけないでしょう。ブース自体にも今回はARAREをふんだんに使いますので、よく目立つはずです(奥平さん)。

私たちの瓦は、卸売りはしません。施主の方から材工一体で施工業務を請け負うのが基本なんです。一生に何度かしかない家づくりに関わるわけですから、素材づくりを含め責任感はすごく感じますが、同時にそれが喜びでもあります。デザイナーや工務店の方へのアピールは当然ですが、オーナーや施主といったデザインに強い発言権を持つ層にもっとARAREの魅力を訴えていきたいと思っています。多少値が張っても、こうした人たちの強い要望があれば採用の可能性は一気に高まりますから。あとは海外マーケット。ニューヨークでも施工事例があり、最近もフロリダに出荷したばかりです。ローマやスロバキアにもこれから納品することになっています。LIVING & DESIGNの出展を通して、海外でもこの素材の認知が広がることを強く期待しています(笹田さん)。(文/編集部・上條昌宏)

LIVING & DESIGN 2015
会期:2015年10月14日(水)~16日(金)
時間:10:00~18:00 (最終日は17:00まで)
会場大阪南港ATCホール(大阪市住之江区南港北2-1-10)
入場料:1,000円(招待状持参者、事前登録者は無料)
問い合わせ先:LIVING & DESIGN 実行委員会 事務局
info@living-and-design.com
光洋製瓦のブースは、正面エントランスから入り、左手奥の2番コーナー、セミナー会場Cホールにつながる回廊の手前になります。

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